Synth Fantasy
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世界初のトミタ立体サウンド・ライブ

〜エレクトロ・オペラ in 武道館 "Mind of the Universe" レポート〜 


 トミタ・サウンドクラウドの原点ともいえる「エレクトロ・オペラ in 武道館」が1979年11月19日、週刊ポスト創刊10周年記念企画として、日本武道館にて実施されました。小松左京のプロデュース、ティエリー・ミュグレーによる「宇宙的デザイン」のファッションショー、ウィリアム・エトラらのコンピュータ・アニメーション、そして5チャンネル(+1ch)のピラミッド・サウンド・システムによる立体音響など、当時のイベント概念を覆す画期的なイベントとなりました。


 

 


 この日のために2億円の機材が仕掛けられた、記念すべきこの武道館コンサートの模様を下記にまとめてみましたので、どのようなものであったのかを推察して下さい。冨田氏はこれをきっかけとして、その後"サウンドクラウド(音の雲)"の壮大なイベントをリンツをはじめ各地で催されることとなります。

  • 日時=1979年11月19日(月)
    • 夕方の部=午後3時開場4時20分開演
    • 夜の部=午後6時開場7時開演
  • 主催=小学館・週刊ポスト/東芝
  • 後援=アメリカ大使館/フランス大使館文化部
  • 協力=市田株式会社/RCAレコード
  • 総合プロデュース=東急エージェンシー/リプロダクションハウス/ルーニッツ・アソシエイツ/P・ボードリー(S・B・A)
  • 企画・構成=小松左京
  • 6チャンネルサウンド・オペレーション=冨田 勲
  • コンピュータ・アニメーション
    • ウィリアム・エトラ
    • トム・ディファンティ
    • ダン・サンディン
  • ファッション・デザイン=ティエリー・ミュグレー

はじめに・・・

 エレクトロ・オペラ"Mind of the Universe"は、5チャンネル・シンセサイザー音楽"ピラミッド型サウンド"と、コンピュータ・アニメーションを組み合わせて、"宇宙のはじまり"から、銀河系、星雲、恒星、惑星など"星間の創造"、さらに地球上における"生命の創造"、"人類の宇宙進出とその未来"を表現しようとするものです。
 ---つまり150億年の「宇宙史」を、5チャンネルスピーカーのつくり出す立体音響空間と、ピラミッド型スクリーン、天井スクリーンに投影されるコンピュータ・アニメーションの映像により、70分間で、"体験"していただくわけです。では、各パートの"楽想"をご覧下さい。

Part 1 "Big Bang" オープニングと宇宙の"大爆発"

 宇宙火球の最初の1秒間は、放射と素粒子だけの世界である。そしてその後、急激な膨張をはじめる。暗黒、強烈な一条の白光が大音響とともに天井の一点から四方へ拡がり、床から吹きあげる激しい放射用のノイズをバックに、混沌とした光の粒がはじけ、渦まき、上昇する。現れかけては消える楽音、それが次第に秩序=メロディーを形成し、うねり、クロスし、ふいにノイズは晴れ上がり、重々しく激しいメロディーが残る。

Part 2 "Creation of the Universe" 銀河と星の創造

  • 答えのない質問
  • 土星
  • ワルキューレの騎行
  • タンホイザー序曲
  • こびと

 膨張をつづける宇宙の中で火球はちぎれ、そのブロック群相互の距離も離れてゆく。個々のブロック内で物質は凝縮し、やがて銀河系が形成されはじめる。ガス状球体だったブロックは縮まるにつれて運動も回転運動に統一されてゆく。個々の銀河系の星間物質の雲から恒星が生まれ、惑星が生ずる。音楽は種々のエレメントを含みつつ「壮大な宇宙の創造」をシンボライズして壮大でシンフォニックなものから、やがて軽快な明るい回転のあるものへと移ってゆく。

Part 3 "Birth of Life"地球生命の誕生

  • アランフェス
  • 全員の踊り

 激しい自然現象の錯綜。雷雨、噴火、雨と嵐、大波。それにふさわしい、激しい衝撃的な音像移動がおこる。その撹乱の中で生命基礎物質の合成がはじまる。そしてさまざまな生物が発生し、人間が誕生する。生命の躍動を象徴する音楽。音は生物の様態と一体となって「落下」「噴出」「奔流」そうして床上から中空、天井へと、旋回しつつ上昇する。生命の喜びが高らかにうたいあげられる。

Part 4 "Call from the Universe" 宇宙からのよびかけ

 後半部に突入する。宇宙から地球へ向けてX線や宇宙線のかたちをとって数々の連絡や呼びかけがある。冨田サウンドは、その宇宙からのメッセージを明確な音像、音楽として、あるときは巨大に、あるときはやさしく語りかけてくる。人を含む自然のただ中で、「宇宙からの声」と人間の「空へのあこがれ」が交錯し、呼びかけはどこからか、誰からか、その源のイメージが音と映像の結合によってあらわされる。巨大な月が現れ、「月の光」の踊りが、宇宙へのあこがれの象徴となり、昂揚してゆく。

Part 5 "Man into the Universe" 人類宇宙へ

 いよいよ「人類宇宙へ」、人類の雄飛がテーマに展開される。人間は英知と勇気を武器に、母なる宇宙へと旅立つ。ホルスト=冨田の「惑星」から「火星」のリズムにのって天体が接近し、飛び去る。月惑星系をこえて銀河系へ、星から星雲へ。そして銀河円盤が形成され、渦を巻いて回転する。音楽は「宇宙幻想」からの「スター・ウォーズのテーマ」となり、フィナーレ「宇宙と踊ろう」のディスコ・ミュージックへとなだれ込んでゆく。

Part 6 "Dance with the Universe" 「宇宙と踊る」

 銀河円盤は今、まさにこの会場に出現する。宇宙の中で誕生し、育まれたすべての生命が乱舞する。銀河円盤はUFOとなって回転し、UFOはスモークをふきあげて、まわりながら上昇する恒星となって四散し、エンディングへ。冨田サウンドは、世界で初めてディスコ・サウンドに挑戦する。ピラミッドの音場のなかでのシンセサイザーのディスコ・リズムは宇宙そのものであり、「宇宙と踊る」ことが可能になる。

フィナーレ

 ディスコが不意に終わって、場内がいっせいに明るくなったところで、アンコール演奏を兼ねたエンディングの「火の鳥」の演奏が、天井から場内いっぱいに響きわたります。
 ---約70分間のエレクトロ・オペラ"Mind of the Universe"のフィナーレです。


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