春と遁走曲
 俺の心にと、胡蝶は月下の雪原に銀粉を蒔いて飛び去った。
 それは、鬼火のように燐々とした炎を、丘のなだらかな斜面に青く曳いた。
 俺の夢は、いつも北極圏に飛んでゆく狂気の蝶だった。
どんな名匠の手になった横笛よりも、
そこでは俺の心は遠くに染込んだ。
 はや、氷山の心に春の蝶のように凍結した紫の自由な花々。
 その青い影の中で、俺は尚、落下してゆく俺の心に、
その花々を掠め取ろうとしていた。
(22歳の時の試作「毒薬と狂気 」より)
  青の光
1992/12/8自費出版

ー目次ー
毒薬と狂気(1970)
架空のオペラ(1969年のノートより)
木蓮幻想
エレジイ 女へ(1971年)
雑記蝶
如来の華

1969年〜1982年の詩とノートから
表紙版画・自作

copyright (c) 2000 shigeo owa Arlequin LTD/ All right reserved