小鳥たちは静かに眠っているのだろうか。

僕は菱形の森の中を歩いていった。  

この明け方に、苔の宝石は発光し  

蔦の首輪は残月を搦め捕り

枯れ草のペルシャ絨毯の上を

さきほど一匹の栗鼠が  

哲学者のように通り過ぎていった。

それから小雨が降ってきて

遠い記憶の森には

月光のように音楽が流れていった。

沈黙・・・・

死者たちの夢を思い起こさねばならない。

雨に洗われる栗鼠の残した  

足跡を辿るように 僕は一本の大木の根元に蹲る。

すると安息の息が  

小さな祠のように降り注ぎ 僕を包みこみ

僕の思想は緑の霧になった。

   やがてフクロウは眠り、  

遠い丘をひとりの農夫が歩いて行った。

農夫の影が緑の霧に投射され

そうして僕の体は粉々になった。

森の出口では今、  

目覚めた鳥たちが朝餉のために

 湖に判文を押しに行く。  

 生ある者の証しに

 今、太陽が射し込んだ。

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