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森
僕は菱形の森の中を歩いていった。 この明け方に、苔の宝石は発光し 蔦の首輪は残月を搦め捕り 枯れ草のペルシャ絨毯の上を さきほど一匹の栗鼠が 哲学者のように通り過ぎていった。 それから小雨が降ってきて 遠い記憶の森には 月光のように音楽が流れていった。 沈黙・・・・ 死者たちの夢を思い起こさねばならない。 雨に洗われる栗鼠の残した 足跡を辿るように 僕は一本の大木の根元に蹲る。 すると安息の息が 小さな祠のように降り注ぎ 僕を包みこみ 僕の思想は緑の霧になった。 やがてフクロウは眠り、 遠い丘をひとりの農夫が歩いて行った。 農夫の影が緑の霧に投射され そうして僕の体は粉々になった。 森の出口では今、 目覚めた鳥たちが朝餉のために 湖に判文を押しに行く。 生ある者の証しに 今、太陽が射し込んだ。 * |
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