Section 16 : 「やさしい HTML」をめざして

 インターネットは,共有のネットワークである。それは,アクセスするすべての人のものである。
 多くの人がアクセスする以上,個々を取り巻く環境は千差万別である。それを考えて,思いやりのある HTML を書くことを強くおすすめしたい。これは,ネットワーク資源の有効利用につながり,真に必要な人に真に必要な情報を迅速に届けることになるのである。


文字コードを指定しよう

 HTML のヘッダには,Section 7 で触れたように文字コードを <META> によって指定するようにしたい。
 文字コードを指定しなければ,文字化けしたときその対処は見る人が行う。これは大変な無駄である。一度指定すれば,多くの人が文字化けに対処する操作を行うことなく快適にブラウズができる。


<IMG> に関して

 ALT 属性は必ず指定しよう(HTML 4.0 では <IMG> の ALT 属性は必須になる)。ブラウザがテキスト・ベースだったり,回線速度の関係で画像を読まないようにしてある場合,画像の内容を推測することができる。また,真に必要な画像だけをあとから読み込むという効率化を図ることができる。

 WIDTH,HEIGHT 属性を指定しよう。画像の大きさがわかっていれば,レイアウトに関してブラウザの負担を減らすことができ,高速化につながる。


大きなファイルへのリンク

 画像や音声ファイルには 100kbyte クラス,またはそれ以上のものも多い。この読み込みはネットワークに大きな負担をかけることになる。
 このようなファイルへリンクを張るときはファイルサイズを明示することが重要である。また,画像は <IMG> で呼ばれる大きなものに関しては ALT 属性にそのサイズを書いておくのもよい。
 いまや絵や音は WWW に彩りを添える必須の要素となりつつあるが,かといってそれらの巨大なデータを湯水のごとく流せるような環境ではない。大きなサイズのファイルは絵・音に限らず選択的な読み込みができるように配慮すべきである。


色の指定

 この「色」という要素の果たす役割は大きい。かといって,無意味に派手な色使いをしたり,見にくい色を選択したり,意味もなく文字色を青にして下線を引くなど見る人を混乱させるようなことは極力避けたい。


Browser-independent

 昨今,「Netscape Navigator 3.0 専用」「Internet Explorer 3.0 専用」と銘打ったサイトが少なくない。だが,本来 HTML は WWW でユニバーサルに用いられるものである。
 確かに,ブラウザ独自の先進機能を使って WWW ページをデザインすることは自由である。だが,それによって見る人の自由を奪ってしまっては意味がない。HTML がもっとも基本的な文字のデータであるからなおさらである。

 できるだけブラウザによらない記述を心がけることが肝要である。ブラウザ固有の記述をするなというのではない。もしそれらがブラウザ上で再現されなかったとしても,それがそのページの内容を損ねるものとならないよう注意すべきである。
 つまり,あるブラウザに最適化しても,あるブラウザ専用のページとすべきではない。公開される情報はすべての人に平等にアクセスされるよう整える必要があろう。
 ちなみに,Academic HTML は HTML 3.2 に準拠している。それを逸脱するものも紹介したが,フレーム以外はそれが再現されない場合でも内容に問題が出ないものに限った。チュートリアルの HTML も軽快に読めるよう無駄をできるだけ省いて書いている。このような地味な体裁もひとつの配慮だと理解していただきたい。

 具体的には,フレームに対する <NOFRAMES> による措置,埋め込みの音声・動画の <A> によるジャンプでの供給がある。

 しかし現実には,すべてのブラウザで見られるページを書くのは大変な拘束を受けることになる。だがそこまで徹底しなくても,現在のスタンダードに合わせた記述は少なくとも考慮してほしい。かといって,それ以前のスタンダードを切り捨てることのない「やさしさ」を WWW パブリッシングに注いでほしい。


 あなたの環境がすべてではないのである。WWW は,あなたがいて,あなたが発信する情報を見てくれる人がいて成り立っている共有のネットワークの上にあり,逆に,それを構成するのがあなたなのである。


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