Synth Fantasy
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冨田勲 : 『明珍火箸』の澄んだ音色録音
※ 明珍火箸の音色はこちらからお聴きください。


 世界的なシンセサイザー奏者、冨田勲さんが(2000年2月)1日、兵庫県姫路市を訪れ、伝統工芸「明珍火箸」の音色を録音した。昨年のロンドン公演「源氏物語交響絵巻」のCD化に際し、明珍火箸の音色を加える構想。冨田さんは平成9年3月にNHK「街道をゆく」のテーマ音楽で明珍火箸の音色を採用しているが、CDとして残るのは初めて。冨田さんは昭和30年ごろ、国鉄姫路駅のホームで列車の待ち時間に偶然、この火箸を目にした。2対4本の鉄の火箸が触れ合って出る澄んだ音色に魅せられ、「この音は私の目標」というほどだ。

 明珍火箸の52代当主は、「音にこだわってきたものにとって、その第一人者に認められることはありがたい。今後の火箸づくりの励みにもなります」と話す。レコーディングはこの日夕、同市辻井のパルナソスホールで実施。市立姫路高校放送部の女子生徒6人が火箸を鳴らす役を担った。録音したのは約1時間半。源氏物語の「浮舟の章」で浮舟が出家するシーンなどに採用するという。

 今後、冨田さんはロンドンに渡り、録音済みのロンドンフィルハーモニーオーケストラの演奏に明珍火箸の音などをオーバーダビング。国内では「源氏物語」がモチーフになっている2,000円札の発行に合わせてCD発売するほか、海外でも今年中の発売を目指す。
 冨田さんは「いつかCDに取り入れたいと思っていた。シンセサイザーはどんな音でも作ることができるが、あの素晴らしい音はまねできない。でも私は、シンセサイザーにしかできない形で、あの音に匹敵する音を作りたい」と意欲を燃やしている。

(2000年2月2日付、産経新聞夕刊より引用)


冨田勲さんが姫路高訪問 【 姫路 】

 姫路で生まれた明珍火箸(ひばし)を打ち鳴らす音を自作の曲に取り入れている作曲家の冨田勲さん(68)が十二日、姫路市辻井の市立姫路高校を訪れ、放送部員に火箸の鳴らし方を指導した。来月、冨田さんと生徒が参加して、滋賀県内の寺院で行う新曲「源氏物語幻想交響絵巻」の演奏で練習の成果を披露する。
 冨田さんは四十六年前、姫路市内で明珍火箸を買い、その響きのとりこになった。同市内の工房を訪れるなどして研究し、曲に取り入れている。
 「源氏物語幻想交響絵巻」のCDを作るにあたり、冨田さんは、火箸の産地で録音したいと希望。昨年二月、同校の音楽ホール・パルナソスホールで放送部員らとともに収録した。以来、冨田さんと同校との交流が続いている。
 同部員らは曲に合わせて火箸をタイミングよく鳴らす練習に取り組んだ。長さ25〜50センチの火箸を細かく打ち鳴らし、雪の降る様子や水の流れを表現。演奏で着る予定の作務衣(さむえ)姿で練習に臨んだ部長の山崎奈津子さん(17)は「火箸は細いので、当てるのが難しい。練習を重ねて、本番ではがんばります」と話していた。
 冨田さんは「効果音としてではなく、曲中で明珍火箸に大きな存在感を持たせる演奏にしたい」と話していた。

(2001年3月13日付、神戸新聞Webニュースより引用)


(冨田氏の談話より)
 「この楽器を知ったのは、昭和30年頃のことなんです。それ以来、曲の中で使いたくてしょうがなかったんですが、録音すると音が歪んでしまって同じ音が再現できなかったんですね。だから使うことができなかった。ところが、NHKスペシャル『街道をゆく』の音楽を担当することになって、音色が合うなと思って使ってみたら、テレビながら良い音だったんですよ。今回のCD『源氏物語幻想交響絵巻』には見事な音で入っていましたね。45年来の思いがかないました。」



明珍火箸について

暮らしのなかに響く伝統の技---明珍火箸


 明珍火箸(みょうちんひばし)は、姫路の代表的な伝統工芸品。明珍甲冑の鍛鉄技術を伝える、鉄を熱する温度と槌を打つ微妙な力加減で生まれた火箸。触れ合うと鈴虫の声の如き妙音が澄み響きます。ドア・チャイム、厄除火箸として、また手あぶり用、囲炉り用に。

火箸風鈴


 現在では火箸としてよりも、四本の火箸を組み合わせた「火箸風鈴」が有名。左はつくし型、瓦釘型、つづみ型、わらび型の四本。右はつくし型、瓦釘型日本づつ。どちらも余韻の長いきれいな澄んだ音色です。


五十二代の歴史に磨かれた技の織り成すハーモニー。


 その昔、京都九条の甲冑師だった時に、近衛天皇の勅命で鎧(よろい)や轡(くつわ)を作り献上致しましたところ大変気に入られ、明珍の姓を賜りました。その後、千利休の注文を受け茶室用火箸として作られたのが明珍火箸。打ち合わせると、鈴虫の音色のような澄んだ音を響かせます。古くより愛された音色、伝統の光沢が今ここによみがえります。 


明珍火箸、冨田氏直伝の楽しみ方


 最後に Synth Fantasy をご覧の皆様だけに、冨田氏直伝の贅沢な楽しみ方をご紹介しましょう。
 まず、二つの同じ火箸風鈴を用意します。次に、一つは左側の柱付近にもう一つは右側の柱付近に配置し、部屋の真ん中あたりでしばらく風を待ちます。すると、何とも言えない「明珍火箸による立体音響サウンド」を堪能することができます。想像しただけでも涼しくなってきますね。
 トミタ・ファンならではの風流なひとときを是非お試しください。

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