『コウヤぁ!お風呂入ったら、ちょっとあたしの部屋にきてくれるかなぁ』
夕食の後片付けをしながら妹の千夏が云う。

『ん?』
『ちょっと話したいことがあるから・・・』

千夏の言葉に振り向いたコウヤに、そう付け加える。
その横でエリオは黙って洗い終わった皿を拭いている。

『あぁ・・・』
と、了解してとりあえず風呂へ入る。
体の手入れを済ませた後、云われた通り千夏の部屋へ行く。

『千夏・・・』
ドアをノックしながら妹の名を呼ぶ。
『開いてるよ〜!』
中から返事が返ってきたのを確認して、ドアを開ける。
なぜか部屋の中は真っ暗だった。

『・・・何してんだ?電気もつけずに』
云いながら蛍光灯のスイッチを入れようとする。
『あ、いいのっ!』
千夏が素早くそれを阻止して、ドアを閉め、そのまま弘也の背中を押して、部屋の中へ連れて行く。
『お、おい・・・』

ドアを閉めたせいで部屋の中は再び真っ暗になった。
カーテンから透けてくる月明かりのみが部屋の中をうっすらと照らしている。
そんな中、何か千夏以外の気配を感じた。
よく見ると、何者かがじゅうたんの上にぺたんと座り込んでいる。

『ELHIO』だ。

『お前・・・こんな所で何して・・・』
エリオは下着のような薄いシャツ一枚で、床の上に座り込みながら、黙って弘也の顔を見上げていた。

『千夏・・・一体・・・』
さすがの弘也も事態が読めず、うろたえる。

『ん〜?ちょっとね!話があるって云ったでしょ?』
小悪魔的な笑みを浮かべながら千夏が云う。

『話?』
『そ、おはなし!』
そう云いながら千夏はエリオの背後に回り、そっと肩に手をかける。
エリオが少しだけびくっと怯えたように震えた気がした。

『コウヤ・・・・・・じゃなかった、おにーちゃんたちってさぁ?』
【コウヤ】という呼び方にエリオが反応しそうになったのに気づき慌てて云い直す。

『結構長いのに全然進展しないじゃん?だから・・・。』
左手でエリオの耳を弄びながら続ける。
『あたしが一肌脱いであげちゃおうってわけ!』
いきなりな事をさらっと言ってのける。

『あ、脱ぐのはあたしじゃなくてエリオちゃんか!』
と、得意の親父ギャグまで付け加える。

『・・・はぁ?』
思わず聞き返してしまう。当然な反応だろう。

『だ・か・ら〜・・・』
『おにーちゃん達見てるとさ、イライラすんのよぅ!焦れったくて!』
本当にじれったそうな顔で云う。
『だからさっさとヤっちゃえ〜っ!ってわけ。 あたしが手伝ってあげるから!』
相変わらず自分勝手である。

エリオは、その間ずっと俯いていて、どういう表情なのか窺うことはできない。
そんな周りの事は気にせず、千夏は続ける。

『さ、脱ぎ脱ぎしましょうねぇ〜!?』
云うが早いか、さっそくエリオの服を脱がせにかかる。

『あ・・・!』
さすがに今まで黙ってたエリオも慌てて抵抗する。
そんなエリオを見て千夏は
『ん?大丈夫だいじょうぶ!恐くないこわくない!』
そう云われると普通余計に怯えると思うが、千夏にはそんな事全く関係なしのようだ。

とりあえず無理やり脱がせるのはやめて
『ん〜じゃぁ・・・エリオちゃんはどうして欲しいのかなぁ〜?』
と、意地悪く笑いながら、エリオに訊ねる。
『・・・・・・』
そう聞かれて、エリオはまた俯いてしまう。
『黙ってちゃわかんないよ?どうして欲しいか云ってごらん?』
その様子を見て、まるで苛めて楽しんでいるかのようにもう一度訊いた




 ・『コウヤの・・・ちょうだい』
 ・とりあえず服を脱ぐ