これまでで現行の規格である HTML 3.2 についてはほぼ網羅した。当然,気になるのは WWW の未来,HTML の次の規格である。その HTML 4.0 の規格は 1997年12月08日にリリースされた。この特徴を少し眺めてみたい。
現実問題,ブラウザのシェア争いの激化に伴ってブラウザ固有の機能が次々に付加されていった。その中にブラウザ固有の要素・属性があった。Section 1,Section 2 で紹介したフレーム化や,表組の背景色を指定する機能もそれにあたる。
HTML 4.0 はこういった乱立したとも言えなくはないブラウザ固有の HTML を容認する形で作られる見通しである。ブラウザ固有の HTML が,ともすると DTP(Desk Top Press:コンピュータを用いて印刷用の文書を編集・組版すること)に近い視覚的な表現に使うものが多いなかで,その多数を取り込むことは,より人目を引く WWW パブリッシングができるようになると喜ぶべきか,文書の構造を記述しその見栄えには極力干渉しないという HTML 本来の思想に反するものと嘆くべきかは意見の分かれるところであろう。
それはともあれ,HTML 4.0 はどんなものになるのか,大まかな特徴をあげておこう。
今まで Inernet Explorer,Netscape Navigator 固有の機能であったフレームがサポートされる。また,ブラウザ全体を分割する通常のフレームに加えて文書の一部をくりぬいて別の文書を表示させるという「インライン・フレーム」も追加される。
ほとんどの要素に対して,ある「イベント(マウスがクリックされた,など)」に反応する動作をスクリプトで記述できる。これにより,動的なページの作成が容易に行えるようになる。
表組に関して,あらかじめ横のセル数と構造を指定して処理速度向上を図り,タグを書く労力を減らすことができる。また,表を3つの構造的役割の異なる部分に分けたり,罫線のひかれ方を細かに指定することで,単なるセルの配置としてのテーブルから,統計表なども的確に表示できる構造を持つことになる。など,ひじょうに多くの拡張がなされる。
もっぱら表示のされかたを指定する「スタイル・シート:CSS」が導入される。これにより,HTML 内の構造と見た目との対応が HTML を書く人によって決められる,ということが可能になる。基本的に HTML 4.0 では以前の視覚的要素の属性はすべて CSS にゆだねることになるが,当然 HTML 3.2 などを考慮して属性による記述も行ってよい。
外部のアプリケーションなどに依存するものを「オブジェクト」として挿入することができるようになる。
論理フォントが大量に増える。これらにより,文書の構造をより的確に表現できるようになる。
<A HREF="..."> などのタグに対して,わざわざマウスを持っていってクリック,というのではなく,キーボードにショートカットを設けて迅速なジャンプが実現できる等の機能が盛り込まれる。これは,ハンディキャップをもつユーザへの配慮である。
フォームにいくつかの要素が加えられる。これらはスクリプトによってコントロールが可能であり,インタラクティブなページの作成をいっそう容易にする。
文字の表示方向などいくつかの点でそれぞれの言語への配慮がみられる。より個々に根ざしたユニバーサルな規格としての HTML が意識されていることがわかる。
詳細は W3C のドキュメント(英語)を参考にされたい。
これらは,現時点でブラウザ固有の機能としてサポートされているのも少なくない。スクリプト処理などは JavaScript などでちょっとした効果をねらうサイトも多く見られるようになった。
とうぜん,HTML 4.0 に盛り込まれないであろうブラウザ固有要素もかなりある。それらを使って悪いということはないが,それによってあなたのページを見られない環境を作ってしまうのはいかがなものだろうか。