Section 11 : オブジェクト(1)

 HTML に外部のファイルを貼り込むものとしてはまず <IMG> があげられる。しかし,実際はさまざまなファイルを HTML と組み合わせることがある。

オブジェクトとは

 WWW におけるマルチメディア化はめざましく,絵と文章がいつの間にやら音あり動画ありになった。また,Javaサン・マイクロシステムズ)によるアプレットもいろいろなサイトで目にする。また,ベクトルグラフィクスを主体としたインタラクティブな Flash ムービーマクロメディア)は,再生環境が広く普及している。

 ここでは,こういった外部ファイルから HTML 文書中に挿入されるものをオブジェクトと総称する。オブジェクトには先ほど述べたような画像,音声,動画,アプレットのほかに,プラグインや“ほかの HTML 文書”などが含まれる。

<OBJECT>

 すでにご存じのように,代表的なオブジェクトとしての画像を貼り込むには <IMG> を使えばよい。しかし,これは画像のみに特化されたオブジェクト挿入の要素である。WWW ではさまざまなメディアのファイルが扱われる可能性があるから,もっと一般的なオブジェクト挿入の要素が必要である。

<OBJECT>...</OBJECT>

これは <IMG> と異なり,“ここから〜ここまで”の形をとる。このような形をとるのは,たとえばオブジェクトがアプレットだとするとき,それに対して初期化情報(パラメータ)を渡すためというのもあるが,<IMG> の ALT 属性のように処理・表示できない場合の代替装置を記述するためでもある。

 <OBJECT><IMG> に比べて汎用性・拡張性が高く作られていて,属性の数もひじょうに多い。詳細は実例を通して後で述べることにして,まずはひととおり眺めてほしい。

<OBJECT> の属性
属性 解説
CLASSID URI 主にオブジェクトのデータを処理するアプリケーションの URI を与える。
CODEBASE URI CLASSID,DATA,ARCHIVE 属性を指定する際の基準となる URI をとくに指定する。
CODETYPE MIME タイプ CLASSID 属性が示す URI の MIME タイプ。
DATA URI オブジェクトのデータの URI。画像の場合はその URI をこの属性に入れる。
ARCHIVE URI(複数) オブジェクトに関連するリソースの URI。これを指定しておくとデータを先読みすることができ,ロード時間の短縮につながる。URI は半角空白で区切る。
TYPE MIME タイプ DATA 属性で示されたリソースの MIME タイプ。
DECLARE ブール値 その <OBJECT>...</OBJECT> が宣言のみを行っていることを示す。これはあとで NAME 属性などを通じて参照される。
STANDBY 文字列 オブジェクトがロード中の時に表示されるメッセージ。
NAME 名前 オブジェクトにつける一意な名前。
WIDTH ピクセル
パーセント
オブジェクトの幅。
HEIGHT ピクセル
パーセント
オブジェクトの高さ。

 それから <OBJECT> の特徴は,内側に代替措置を示すことができる点にある。これを念頭に置いて,次のように <OBJECT> が使われている状況を考えていただきたい。

<OBJECT (MPEG ムービー)>
  <OBJECT (QuickTime ムービー)>
    <OBJECT (GIF イメージ)>
      <P>(代替テキスト)</P>
    </OBJECT>
  </OBJECT>
</OBJECT>

属性などが具体的に示されていない観念的なものだが,まずは考え方をつかんでいただこう。

 HTML 文書中で上のような記述に出会ったら,ブラウザはまず MPEG ムービーを表示させようとするだろう。もしあなたの環境が MPEG ムービーを再生できるものであったら,めでたく動画を見ることができよう。ところが,あなたの環境が MPEG ムービーは表示できないとする。すると,いちばん外側の <OBJECT> の内側を表示しようとする。そこには,QuickTime ムービーが指定されている。これを表示できればめでたしめでたしなのだが,無理なときはさらにその内側,GIF イメージの表示が試みられる。それでもだめなら仕方なく代替テキストを表示するということになる。

 もうお気づきかと思うが,このような指定をしておくと,読者の環境に応じて最良のプレゼンテーションが実現できるという利点がある。すべての環境がさまざまなデータを迅速に処理できるとは限らないし,キャパシティがあるとも限らない。

 たとえば,高速な環境には動画を提供し,やや古い環境にはその動画のハイライトを静止画で提供する。これは環境に応じた最良の形であなたの情報を閲覧できることである。閲覧者は動画が出てくるはずがさっぱり何も起こらず肩を落とすこともなくなるだろうし,送り手は最高の環境でなくても何らかの形でページのコンテンツに触れてもらうことができる。送り手にしてみればいくつかの候補を用意するのは面倒かもしれないが,そういった思いやりがあなたの情報のクオリティを高めるのだろう。