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見つけよう遥かな音〜冨田勲の世界 |
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シンセサイザーというパレットを使いまして、最初に頭に浮かんだ音の一番の元になるカラー、色で言えば色彩に当たる部分、それをまずシンセサイザーで音を組んで、そしてその音を演奏するわけです。そしてその音をマルチチャンネルのテープレコーダーの、16チャンネルのうちの一つのチャンネルに入れるわけです。それが完了するとまた音を変えて別なチャンネルに足していくわけです。これが16チャンネル一杯になりますと、いったんミックスダウンして別なテープレコーダーへ録音して外へ出してしまうわけです。それからまた、次の音をどんどん足していくわけなんです。その後に今度は音場を作らなくてはいけない。結局、素材だけが並んでるだけですから、我々が実際に音楽を聴く場、遠近感、移動、そういった作業をその後やるんです。これは大体シンセサイザーから音を引き出すのと同じ位の時間がかかります。普通の演奏ですとステレオの2つマイクを向けただけで、オーケストラのファースト・バイオリン、セカンド・バイオリン、ティンパニーが何処で、ブラス・セクションが何処だという配置が自然にそこへできているわけですけれども、それが全くないわけですね。ですからそういった状態を作るわけです。ただ、それが常識的な配置でなくてもシンセサイザーの場合はいけるわけで、やり易いと言えばやり易いんです。
私も一回すぐ近くで落雷に遭いまして、それは今から何年前になるかな・・・平湯温泉から乗鞍へ自分一人で運転して、乗鞍の頂上へ運転してたわけです。雨が降ってなかったんでその時窓を開けていたんですけれども、10メートル位先に雷が落ちたんですね。雷っていうのは最初パキーッていう竹を割るような音がするわけですね。やがてそれが、ゴロゴロゴロゴローッていうしまいには非常に低音部の音ですか、地鳴りのような音にかわっていくわけです。雷っていうのはどういう仕組みでああ言う音がするんだろうと言うことを、帰ってから考えてみたんです。
結局1万メートル上からの放電ですね。この放電は一瞬なんだけれども、音って言うのは距離が離れるに従って遅れて行きますでしょ、ですから10メーター前の木に落ちたその部分の雷鳴は瞬間的に直接耳に入ってくるわけです。3300メートルですか、これが10秒遅れますね。1万メートルと言うことになると1分近く遅れてくるわけです。その間、空気を通る長さというのは随分違うわけです。シンセサイザーをいじった方はお解りになると思うんですけれども、この空気というのはどちらかと言うとロー・パス・フィルターと思うんですよ。ですからロー・パス・フィルターに雷が自然のエンベロープがかかってるわけで、非常に10KC位を含んだ高い成分の音から、最後は20ヘルツ位の低い音までが、エンベロープがかかって徐々に変わっていくわけですね。それから雷の発生する雷雲というのは中で凄い上昇気流、空気が動いてますから。そこで一つのフェーズ効果、まあ僕らはそれを電気的に起こすためにフェーズ・シフターと言うのを使っていますけれども、その現象もそこにあります。それから、山であるとか、都会ではビルであるとか、そう言うところに音が突き当たって跳ね返ってくる。これは一つのエコー・マシン効果ですね。それから、最初自分の近くに落ちた瞬間というのはモノーラルの音だと思うんです。一点から聴こえてくる。
それが、時間が経つに連れてだんだん音場が広くなっていく、ひろーい範囲から最後はもうどこから聴こえてくるかわからない状態になるわけです。この変化の仕方と言うのはミキシング効果だと思うんです。と言うわけでね、やっぱり天然のシンセサイザーですね、雷って言うのは。ですから、この雨の庭では、その天然のシンセサイザーと人間の作ったシンセサイザーの対比みたいなものを組み合わせてみたんです。
Synth Fantasy |
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