第1使徒は恐らく「アダム」であろうことは放送を見ても容易に想像がつく。
セカンド・インパクトの時に現われた光の巨人をアダムとTV版では呼んでおり
「これが第1使徒であり、それから第2使徒をエヴァとして利用したのだろう」と
考えることは、極めて自然である。
しかし、話はそう簡単ではなかった。
8話で出てきたベークライトに固められたモノも「アダム」と呼ばれ、
ターミナルドグマの十字架に張り付けられたモノも(以後リリスと呼ぶ)「アダム」
と呼ばれた。
とはいえ、セカンドインパクト直後にあのような巨大なものを移動できたとは
考えにくい。少なくともアダムとリリスは同一ではないと考えるべきだ。
映画で話られたように、光の巨人を卵にもどすことがセカンドインパクトの目的で
あったとの描写も有ることから、「光の巨人」と「ベークライトの胎児」を同一の
モノと考える方が適切で、多数説といえよう。ここではこれら両方を同一のモノと
みなし、アダムと呼ぶ。
しかし、このことは「第2使徒は何か?」という問題をより深刻化させた。
「リリスが第2使徒である」というのが比較的多数派なのではないだろうか?
とはいえ、それには多くの論理破綻が見える。
第2使徒の候補としてはリリス・エヴァ初号機の他、レイが挙げられた。
レイはカヲルに「君は僕と同じだね 」と言われており、「カヲルが
使徒ならばレイも使徒かもしれない」という意見からである。
聖書では、リリスは最初の人類であるアダムの妻であったが、好色のため アダムを捨てサタンと結婚した、淫乱を意味する悪魔?であるらしい。しかし 一方でリリスは地母神であるともされ「エデンができたときに既に居た」とも 言われる神でもある。
リリスに関しては下記のリンクが詳しい | |
底本 | |
「妖精の世界」 研究社 |
妖精辞典 内 |
『神話・伝承事典』大修館書店 |
注:
最初のリンクの index にある
解説には
著者がフェミニストであるのは共感するのだが、残念ながら、本書では「女性崇拝」に
無理をして理屈をこじつけたような記述が散見されると共に、不利な文献等は
併記されることもなく、一方的な主張が展開され、社会の統制権を女性のみに
与えようとする嫌いがある。
と書かれている
The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets
|
平凡社世界大百科事典 | |
(不明) |
私は、ここで大胆に「リリスは人工子宮であった」と仮説する。人工子宮では
あまり適切ではないかもしれない。よりわかりやすい言い方をすると「ヒトの
コピー機」とも言える。要するに、そこに遺伝子をダイブ(挿入?)すると
コピーをとってくれるモノである。もちろん全く同じコピーではなく、遺伝子的な
差を自動的につけてくれるというありがたいシロモノと考える。
では、カヲルのいう 「君は僕と同じだね」はどうなるのだろう?
この件に関しては後述するが、「同じくリリスから作られたモノだね」という
意味にとるべきだろう。
しかし、使徒の目的がアダムの接触にあると考えられる以上、アダムはむしろ
「神、または神に類似するもの」と考える方が自然だ。
私は「アダムは堕天使ルシファーである」説を採用している。
天で神との戦争に敗れたルシファーは、なんとか地球に逃げおおせたが
もはや力尽きつつあった。最後の力を振り絞り、地母神=人間コピー機としての
リリスをつくり、コピーをとった。その13体の孫コピーに2008年に復活すると
告げて、ルシファーは今の南極で眠りについた。13体の孫コピーのうち1体が
さらにコピーをとられ、7体の曾孫コピーが現われた。これが人間。
このように2008年にルシファーが復活し、最後の審判が行なわれる予定だったが
「ルシファー復活を前にATフィールドを開放させ、卵の状態に戻して
しまうことにした」 これがセカンドインパクト。
2008年にルシファーが復活する予定なのに復活しないので、12体の孫コピー達
すなわち使徒は勝手に起き出し、リリスと融合することによって、人間たちのように
生殖しようとしている。これが使徒の目的。
これまた大胆な仮説だが、割に自然に、すべての謎を解明するのではあるまいか。
このようにアダムを神とするならば、キリスト教での12使徒にキリストが含まれない
ということから、アダムは使徒ではない と考えられる。
#14で「作業はレイが行なっている」というセリフがあるが、その
作業とは「ロンギヌスの槍をリリスに突き刺し、機能を停止させた上で、その
下半身を切り取り、ゼーレの元へ送る」という作業だったのではないだろうか
そして、この作業によりリリスを入手したゼーレが、アダムのサンプル(
加持がゲンドウに横流ししたものの一部 )をリリスに作用させたモノにより
ゼーレは使徒を作ることができたのではないだろうか。
渚カヲルも同様に作られたと考えることができる。カヲルの元となったモノに
関しては「リツコの母 赤木ナオコだったのではないか?」とか「実は赤木リツコ」説
「アスカまたはアスカの母キョウコ」説などが散見できる。しかし「アダムの
サンプルからできたのでカヲルは使徒であり、ユイのLCLからできたので
綾波レイは使徒ではない」と考える方が自然に思われる。
エヴァンゲリオンの特徴的なところは、エヴァの中にある「素体」の力は強大で 本来の力を抑えることが設計思想としてあることがうかがえる。例えば「稼動電力は 有線で供給され、有線が切れると内蔵電池は5分程度しかもたない」点とか、描写は はっきりと描かれていないが「エントリープラグは延髄付近を切り取る形で 挿入され、脳の思考などを司る部位をチルドレンが代わりに担っている」点である。
こうしたエヴァンゲリオンのなかでも、初号機はその重要度が極めて高いことは
TV版でもはっきり描写されている。
当初の設定では「初号機にはゲンドウの愛妻であるユイの魂が宿っているから
その重要度が高い」と設定されていたと思われるが、その後「初号機の素体が
使徒のオリジナルであり、それ以外は人間の遺伝子技術により作られたコピー」と
いうように設定変更されているようだ。
私の考察では、「人間に火をもたらした神」とされるラファエルを使徒の名前
として予想している。上の考察から、司るものは「智恵」もしくは「科学」あたり
ではなかろうか
設定変更が行なわれたからというのが、製作者側の理由だが、それだけでは ミもフタもない。別な理由もあると考えられる。もっとも後付けな解釈と なってしまうことは否めないが。
使徒の番号が出現順であるとするなら18番目が人間であることは
矛盾する。使徒であると明らかになった順とするのもまぬけだし、死海文書に
記述されているはずである。これはネルフ・ゼーレ内部での(ゲンドウ・キール両方
独自の)情報操作によるものと考えると自然になる。
第3使徒から第10使徒までは#14でも明らかなように、番号は一致している。
しかしそのときゲンドウがイロウル出現の事実はないと否定したこと。#13では
ゲンドウが「誤報だ! 」などと言ってデータを消去したこと
など、ゲンドウの言動には矛盾を発生させる点があるところから、使徒の番号は
2重に存在しうるという点を考慮することができる。
キールの「まぁいい。今回の君の罪と責任は言及しない 」という
セリフから考えると、キール自身もゼーレのメンバーに使徒についての
正しい知識を与えていないように見受けられる。
使徒の数をあいまいにすることに重要なキーとなることが、第1・第2使徒を
はっきりと述べないことにある。
伝えられていた使徒番号は「第1使徒 アダム=光の巨人。第2使徒 先住人類で
既に滅亡。」といった、古い設定のままであったのではなかろうか。エヴァや人間を
使徒と説明してしまうと「倒すべき使徒を利用して使徒を倒しているのは当の使徒」
という、一見矛盾したことに陥ることが使徒を明示的に述べない理由であり、また
自身で使徒を作り出していることをカモフラージュしているとも考えられる。
加持は古い設定を引きずっていたキャラクターであるから、ミスはやむをえない。 製作者サイドにしても、あの時点では第1・第2使徒を現在のように設定できて いなかったと考えるべきである。それを考えれば「加持はそこまで謎に迫ることが できなかった」説が採用できる。そして、それだから、ミサトにリリスを見せた ことで、殺されることはなかったのである。
ミサトが人間を18番目の使徒であると主張したのは、ミサトが説明を
はしょったからではないだろうか。
もちろん製作者サイドが、エヴァンゲリオンの製作目的・主張として
「考えろ 」をもってきたため、謎解きを破綻させるために
わざと間違えさせたと考えることもできる。
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