Hints of fonts on the web―Web におけるフォントのヒント

Section 3:サンセリフ欧文(1)

 サンセリフとは,“うろこがない”という意味である。起筆や終筆部分に独特の装飾がないものをいう。CSS では,こういった特徴のフォントファミリを一般フォントファミリ“sans-serif”で総称する。

 サンセリフ体は,一般に字画の太さが均一で,装飾によって込み入っていることが少ないので,解像度の低い画面上で重用される。

サンセリフ欧文(1)

Helvetica

Helvetica

 たいへんに有名で広く使用されているサンセリフ欧文書体。ファミリ名は,“Helvetica”。Mac OS に標準的にインストールされている。基本的な書体の 1 つである。ここにあげたものは標準的なもので,ウェイト・幅に多くのバリエーションがある。1957 年アルフレッド・ホフマン(Alfred Hoffmann)とマックス・ミーディンガー(Max Miedinger)によってデザインされた。当時のこの書体名は“Neue Haas Grotesk”。“Helvetica”は,ラテン語で“スイス”の意。

 Arial と類似するが,細部のデザインが異なる。Helvetica のインストールされていない Windows システムでは,これを指定すると Arial で代用されることがある。Helvetica の持つ端正な印象は,字画の末端がベースラインに対して平行または垂直に処理されている点にある。これが,Arial との決定的な違いのひとつでもある。

 Helvetica フォントファミリには,欧文書体では珍しい“ラウンドサンセリフ体”(和文の丸ゴシック体にあたる)が含まれている。

 Helvetica については,デザインが同じである代用書体ビットストリーム社の“Swiss 721”(ファミリ名は“Swis721 BT”)がある。URW++ 社の“Nimbus Sans L”も Helvetica に基づくデザインである。Nimbus Sans L を含めた URW++ 社による 35 のフォントは,無償利用できるものとして,Linux ディストリビューションに付属していたり,GhostScript に付属していたりする。

Neue Helvetica

Neue Helvetica

 上記の Helvetica を 1983 年に改刻した書体。ファミリ名は“Neue Helvetica”。モノタイプ社アドビシステムズ社から出ているものは,“Helvetica Neue”。

 これも,上にあげたものは標準的なもの(55 Roman)であり,2004 年 1 月現在,白抜き(Helvetica 75 Bold Outline)を含めると,ウェイト・幅・スタイルのバリエーションは 51 ある。

Arial

Arial

 これも広く使用されているサンセリフ欧文書体。1982 年,ロビン・ニコラス(Robin Nicholas)とパトリシア・ソーンダース(Patricia Saunders)によるデザイン。ファミリ名は,“Arial”。Windows に標準的にインストールされているほか,Internet Explorer を導入するとインストールされることがある。

 Helvetica と類似するが,細部のデザインが異なる。ひと目でわかるほどデザインが異なる文字は,“G”“R”“a”“r”“t”といったところ。このことから,Helvetica の代用書体として重用され,Helvetica と並ぶポピュラーなサンセリフ欧文書体になっている。

 逆に,プリンタに Helvetica が内蔵されている場合,Arial の指定が印刷時に Helvetica に置き換わることもある。

 Arial フォントファミリにも,ラウンドサンセリフ体が含まれている。

Verdana

Verdana

 “画面上で見やすい”ことを目標に,マッシュー・カーター(Matthew Carter)が 1996 年にデザインした新しい書体。ファミリ名は,“Verdana”。Windows 98,Me,2000,XP に標準インストールされているほか,Internet Explorer を導入するとインストールされる。

 一般に文字の幅が広く,小さな文字でもつぶれにくい。似た形状の文字の判別がしやすいように注意深くデザインされている。また,エックスハイトが高く設定されており,サイズの割に大きく見えるという特徴をもつ。

Tahoma

Tahoma

 Windows 98,Me,2000,XP に標準的にインストールされている。ファミリ名は,“Tahoma”。

 Verdana に似たデザインだが,サイドベアリング(文字間隔)が狭い。

Trebuchet MS

Trebuchect MS

 ファミリ名は,“Trebuchet MS”。Internet Explorer インストール時に導入することができる。

 1996 年にリリースされた。グロテスク系,ヒューマニスト系の両方の特徴を持ち,Gill SansFrutiger などの影響を受けている。小さなサイズでも“Trebuchet である”ことがわかるような個性を有しており,たとえば,“M”“g”“i”“j”などにそれを見ることができる。

Calibri

Calibri

 Windows Vista および Office 2007 に添付されるサンセリフ書体。字画がラウンド処理されており,暖かい雰囲気を出している。正体を傾けたのではないイタリック体が用意されている。

Candara

Candara

 Windows Vista および Office 2007 に添付されるヒューマニスト系サンセリフ書体。開口部の広いデザインで,線の抑揚が平筆の勢いを感じさせる。Finnegan を整然とさせたような雰囲気。

Corbal

Corbel

 Windows Vista および Office 2007 に添付されるサンセリフ書体。シンプルで柔らかいデザイン。

Segoe UI

Segoe UI

 Windows Vista のユーザインタフェースに対して開発された,“Segoe UI”は,ヒューマニスト系サンセリフ書体である。Frutiger に似た特徴を持つが,低解像度の画面上での識別のため,数字の“1”,大文字の“I”にセリフをつけている点が特徴的である。

Geneva

Geneva

 ファミリ名は,“Geneva”。Mac OS の標準フォントのひとつである。もともとビットマップフォントのみだったものがアウトライン化されたという経緯がある。

 典型的なグロテスク系のサンセリフフォントといえよう。

Chicago

Chicago

 ファミリ名は,“Chicago”。Mac OS の標準フォントのひとつで,OS 9 まではシステム用の欧文フォントであった。これも,もともとビットマップフォントのみだったものがアウトライン化されたという経緯がある。

 線が比較的太く,字画の太さが均一でない。“0”(ゼロ)に斜線が入っているのも,システムフォントのための配慮であろう。

Lucida Sans Unicode

Lucida sans Unicode

 ファミリ名は,“Lucida Sans Unicode”。Windows 2000,XP に標準的にインストールされている。エックスハイトが高めにデザインされている。

 “Unicode”と冠されているだけあって,幅広い文字種をカバーする(現在では,OS の内部処理で Unicode を使うことが多くなったため,多くのフォントの文字種も増加する傾向がある)。

Impact

Impact

 細長い字面と極太の字画を持つ,文字どおりインパクトのあるディスプレイ用サンセリフ欧文書体。ファミリ名は“Impact”。Windows 98,Me,2000,XP に標準インストール。Internet Explorer および Microsoft Office のインストールなどで導入される。

Univers

Univers

 典型的なグロテスク系サンセリフ欧文。1957 年のデザイン。ファミリ名は“Univers”。ウェイト・幅等の多くのバリエーションがあり,標準的なものは 55 Roman。ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。

 HelveticaArial に似た印象があるが,こちらのほうが“ゆったり”している。この書体を設計したアドリアン・フルティガーの“Frutiger”も有名な書体のひとつである。

 ビットストリーム社から,この書体と同じデザインの代替書体“Zurich”(Univers 55 に相当するファミリ名は“Zurich BT”)が用意されている。

 Univers は,1999 年に“Linotype Univers”として改刻されたものがある。Linotype Univers は,9 ウェイト,4 種の幅,それに,等幅(Linotype Univers Typewriter)を加え,63 フェイス構成になった。