ここでも,ポピュラーなサンセリフ欧文書体,および CSS2 仕様書にあげられている書体を紹介する。
1960 年代のデザイン。ひじょうに高いエックスハイト,それに比したひじょうに低いアセンダおよびディセンダを特徴とする。ウェイトの低いものは本文に使用され,一方でウェイトの高いものはまたユニークなデザインであり,ディスプレイ用に用いられる。ウェイトの高い“Compact”および“Nord”(フランス語で“北”の意)では,“$”“a”の字形が大きく異なる。
ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。ビットストリーム社による同一デザインの書体名は“Incised 901”。
“角丸”なデザインで,メカニカルな雰囲気を持つサンセリフ書体。1962 年に完成された。ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。ビットストリーム社よりリリースされている代替書体は“Square 721”。
Eurostile には,2008 年,改刻版の“Eurostile Next”がリリースされた。
1976 年のデザイン。エックスハイトが高い。風通しのよい,わずかに傾いたユニークな字形が特徴的。イタリック体および斜体は 2005 年 7 月現在ラインナップされていない。
Microsoft Office に添付されていることがある。
Microsoft Office 2003 にボールド体が付属する(上掲の見本)。Optima と同様な,縦画と横画の太さが異なるサンセリフ体。女性的な雰囲気。Optima に比べて,線の抑揚が少ない。
Microsoft Office 2003 に付属する。1994 年リリースの新しい書体。線に強い抑揚があり,“k”の字形などが特徴的。
1968 年のデザイン。Helvetica や Univers などとは異なる特徴をもつ。ごくわずかに右に傾いており,これが文字に動きを与えている。視認性が高く,さまざまなテキストに適する。
ビットストリーム社による互換フォントは,“Humanist 531”。
1990 年,エリック・スピーカーマン(Erik Spiekermann)らのデザイン。オフィスでのコミュニケーションの効率化の狙いを含んでいる。タイプライタ風の細身の字形が特徴。Officina Serif と対になって展開されている。
高めのエックスハイトのサンセリフ書体。セリフ版の Stone Serif もある。
近年,セリフ・サンセリフといった異なるカテゴリにまたがって展開するファミリもあり,Stone シリーズはそのひとつである。Stone Sans,Stone Serif と Stone Informal,さらに Stone Humanist(新たに追加されたヒューマニスト系サンセリフファミリ) からなっており,これらは組み合わせて使用したときに調和されるように設計されている。こうした“カテゴリにまたがるファミリ展開”という点では,Bitstream Vera シリーズ,Officina シリーズ,Lucida シリーズもそのひとつである。
1936 年,AT&T 社の電話帳用にデザインされた。小さいサイズでページに大量の文字を詰め込めるようにデザインされている。
1978 年,AT&T 社の 100 周年において,電話帳用に,Bell Gothic を置き換える目的で,マッシュ−・カーターらによってデザインされた。Bell Centennial は Bell Gothic より視認性を高め,小さなサイズでの判別性を高めている。
ファミリは Name and Number(上掲の見本),Address,Sub Caption,Bold Listing(小文字はスモールキャピタル)からなる。Bell Centennial ファミリは,“インクのにじみ”を計算して設計されており,とくに字画が交差する部分が細く絞られている。これによって小さいサイズでの印刷でもつぶれにくい。とくにこの処理は Bold Listing で顕著であり,ユニークな字形になっている。これを逆に大きなサイズで使用すると,思わぬ効果が期待できる。
1925 年ドイツでのデザインをもとに,1975 年にデザインされた。Futura に比べて徹底された幾何的なデザインが特徴。
ジオメトリックサンセリフのひとつ。1927 年に最初の“Kabel”が作られ(このディジタルフォントはライノタイプ社から発売されている),1975 年にインターナショナルタイプフェイス社が改刻した(ITC Kabel,上掲の見本)。エックスハイトが高くなり,いくつかの字形が変更されている。小文字の“g”の字形がひじょうに特徴的。
欧文ではひじょうに珍しい,和文の“丸ゴシック体”にあたる書体ファミリ。1979 年のデザイン。
1960 年前後に制作された,グロテスク系サンセリフ書体。Helvetica,Arial に比べてエックスハイトが低く,むしろ Akzidenz Grotesk に似る。
1997 年デザインの,ヒューマニスト系サンセリフ書体。読みやすさを,錯覚等を考慮してひじょうに丹念に追究してつくられている。
ファミリ名“Egro”は,ラテン語で“したがって”の意。
1997 年のデザイン。平筆の勢いを感じさせるサンセリフ書体。横画や曲線は,縦画より細く,これは太いウェイトほど顕著になってくる。
1986 年,雑誌の見出し書体としてデザインされたものがもとになっている。特徴のあるジオメトリックサンセリフ系書体。
いくつかの文字の字形が異なる“Insignia Alternate”があり,組み合わせて使用することができる。上掲の見本は,すべて通常の字形(Insignia Roman)。
1990 年のデザイン。コンパクトなサンセリフ書体で,小さなサイズでの使用にも堪える。
ファミリ名“Tetria”はギリシア語の“tetra”(4)からきており,“シンプルで使いやすい”という願いが込められている。
エリック・スピーカーマンのデザイン。発売元フォントフォント社の接頭辞を冠して“FF Meta”と呼ばれることが多い。もともと 1980 年代にドイツの郵便局専用の書体としてデザインされたものだったが,採用されず,これを改良して売り出したら大ヒットしたといういわく付きのフォントファミリである。
字幅が狭めで,Officina Sans に似た特徴を持つ。上掲の見本はウェイト Book であるが,多くのウェイトに展開されている。上掲の見本の数字はオールドスタイルだが,ライニング数字のものもある。
1937 年のデザイン。字画の太さが均一でないサンセリフ書体であるが,小文字の字形がスモールキャピタルのもの,大文字と小文字の両方の特徴を持つものが含まれている。
ビットストリーム社の互換フォントは,“Exotic 350”。
1980 年のデザイン。通常は直線である部分が曲線になっているところがある字形が特徴。
サンセリフ欧文はセリフ欧文より歴史が浅いが,これはその中でも古い部類に入る,クラシックなグロテスク系サンセリフ書体。
代替書体として,ビットストリーム社の“Gothic 725”(Bold と Black のみ)がある。