前節に引き続いて,サンセリフ欧文書体を紹介していく。
ビットストリーム社がオープンソースへの理解のもと,2003 年にリリースした“Vera”シリーズ。無償で入手可能。サンセリフ・セリフ・等幅の 10 フェイスからなるが,上記はサンセリフのもの。正体・ボールド体・斜体・ボールド斜体の 4 フェイスから構成される。
エックスハイトが高い読みやすい書体で,Verdana よりは細身の印象。ファミリ名は,“Bitstream Vera Sans
”。
Vera シリーズのダウンロードは,GNOME プロジェクトのページ(英語)から,注意を熟読の上,されたい。なお,圧縮形式に zip,gzip-ed tar があるので,注意してダウンロードされたい。また,オープンソースのオフィススイート,OpenOffice.org にもバンドルされている。
レッドハット社が,Windows で重用される Arial,Times New Roman,Courier New からの“解放(liberation)”を意図してリリースした書体群,“Liberaion”シリーズ。GPL ライセンス(ただし,これを利用した文書,埋め込んだ PDF ファイルなどに GPL は及ばない)で,無償で入手可能。サンセリフ・セリフ・等幅の 3 ファミリ 12 フェイスからなる。スティーブ・マッテソンがデザインした。
上記はサンセリフファミリ“Liberation Sans”。正体・ボールド体・イタリック体・ボールドイタリック体の 4 フェイスから構成される。グロテスク系サンセリフ書体で,(置き換えて利用できるように)Arial と文字幅が一致するという特徴がある。ファミリ名は,“Liberation Sans
”。
Liberation シリーズの入手方法は,Appendix D を参照されたい。
“読みやすさ”を考えてデザインされたサンセリフ欧文書体。1930 年ごろ,エリック・ギル(Eric Gill)が,師であるエドワード・ジョンストン(Edward Johnston)のロンドン地下鉄のサイン書体(P22 Underground)の影響を受けて制作した。ウェイト・幅等の多くのバリエーションがある。ファミリ名は,“Gill Sans
”。
モノタイプ社のものは,ファミリ名“Gill Sans MT
”。ビットストリーム社から,この書体と同じデザインの代替書体“Humanist 521”(ファミリ名は“Humanst521 BT
”)が用意されている。ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。
サイン用としてあまりにも有名なサンセリフ書体。日常気づかずに目にしていることだろう。もともと,パリ郊外の空港のサイン用書体として 1968 年にデザインされた。ファミリ名は“Frutiger
”。多くのウェイト・幅等のバリエーションがあるが,標準的なものは 55 Roman。
ビットストリーム社から,この書体と同じデザインの代替書体“Humanist 777”(ファミリ名は“Humnst777 BT
”)が用意されている。
ちなみに,Microsoft Reader をインストールすると,Frutiger(Frutiger Linotype)がインストールされる。ただし,この Frutiger は,数字がオールドスタイル(高さがそろっていない)である。
Frutiger には,アドリアン・フルティガー自らの手で,2001 年“Frutiger Next”として改刻されたものがある。Frutiger に対しては“斜体(oblique)”が用意されているのに対して,Frutiger Next に対しては斜体はよりイタリック体に近いものに変更されている。
幾何学的なデザインが特徴の“ジオメトリックサンセリフ”のひとつ。1970 年代に雑誌のロゴ用としてデザインされたのがはじまり。ファミリ名は,“AvantGarde
”。ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。
ビットストリーム社製もののファミリ名は“AvantGarde Bk BT
”。URW++ 社の Avant Garde 互換フォントは“URW Gothic L”である。
“ジオメトリックサンセリフ”のひとつ。ファミリ名は,“Century Gothic
”。Microsoft Office とともにインストールされる。モノタイプ社が,自社の“Twentieth Century”というジオメトリックサンセリフ系書体をエックスハイトを高くリデザインしたものである。
Avant Garde Gothic に類似しているため,その代用として用いられることがある。とはいっても,Helvetica と Arial ほど類似しているわけでなく,数字・大文字のデザイン全般,“i”“j”(上の“点”が,Avant Garde Gothic では長方形,Century Gothic では円)および“u”に大きな違いを見出せる。
幾何的な形状を特徴とする“ジオメトリックサンセリフ”を代表する書体。ドイツでのバウハウス運動のもと,1920 年代後半のデザイン。ファミリ名は,“Futura
”。ポピュラーな書体で,ウェイトの高いものは見出し用・ディスプレイ用に重用される。Futura はラテン語で“未来”の意。
Avant Garde Gothic,Century Gothic に比べてエックスハイトが低い。
ビットストリーム社製もののファミリ名は“Futura Bk BT
”。
ジオメトリックサンセリフファミリのひとつ。Microsoft Office に“Tw Cen MT
”のファミリ名で付属していることがある。モノタイプ社よりリリース。Futura によく似たデザインだが,大文字の高さ(キャップハイト)と背の高い小文字の高さが同じである点が異なる。また,こちらのほうが線に抑揚がある。Century Gothic の原型になった。
ファミリには,グロテスク系の雰囲気を持つ“Twentieth Century Classified”が含まれる。
1988 年,アドリアン・フルティガーのデザイン。Futura に基づいた幾何学的なデザインに,読みやすさを重視したヒューマニスト系のデザインが取り入れられている。Futura がラテン語の“未来”であるのに対して,Avenir はフランス語の“未来”。
Avenir には,改刻版の“Avenir Next”もある。
サンセリフ書体であるが,字画の太さは均一ではない。高めのエックスハイトと,高い視認性を誇る。エレガントな雰囲気を持つのも特徴。1958 年ハーマン・ツァップ(Hermann Zapf)によってデザインされた。ファミリ名は,“Optima
”。Mac OS X に標準的にインストールされているほか,ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。
ビットストリーム社では,“Zapf Humanist 601”という名前で,ファミリ名は“ZapfHumnst BT
”。URW++ 社では,“Classico”という名前になっている。
Optima には,“Optima Nova”として,ディジタル処理により適するように改刻されたものがある。Optima に対しては“斜体(oblique)”が用意されているのに対して,Optima Nova に対しては“イタリック体”が用意されている点が大きく異なる。
20 世紀はじめにデザインされたサンセリフ書体。古典的でポピュラーな書体の 1 つである。「1」がセリフを持っている点,「g」が 2 階建てである点が,字形の大きな特徴である。
Windows XP に標準インストールされているほか,Microsoft Office などに付属していることがある。
大規模なウェイト展開がされたのが 1979 年。字形がやや細身のため,少ないスペースに文字を詰め込まなければならない新聞の見出し,広告などに利用される。
20 世紀はじめにデザインされたサンセリフ書体。古典的でポピュラーな書体の 1 つである。Microsoft Office などに付属していることがある。
ウェイトの高いものは後にデザインされたのだが,これが新聞の見出しなどで重用されている。
1992 年にロバート・スリムバック(Robert Slimbach)らによってデザインされた,新しいサンセリフ欧文書体。Frutiger に似て,高いエックスハイト,広い開口部を持ち,可読性に優れる。ゴシック体を基調とする和文文書の欧文部分に使われること(ゴシック体と混植されること)もしばしばある。
通常版の OpenType 版 Myriad は,Light,Regular,Semibold,Bold,Black の 5 ウェイトからなり,それぞれにイタリック体がある。また,それぞれのウェイトについて Condensed,SemiCondensed,Normal,SemiExtended の 4 つの幅があり,計 40 フェイス構成になっている。
Adobe Photoshop Album Mini 2.0 に,Myriad を画面表示用にチューニングした“Myriad Web”が(6 書体)添付されている(ファミリ名は“Myriad Web
”)。Adobe Phooshop Album Mini 3.0 には,“Myriad Web Pro”が 6 書体添付されている。また,Adobe Reader 7 には,OpenType 版 Myriad が 4 書体添付されている(ファミリ名は“Myriad Pro
”)。