前節に引き続き,セリフ欧文書体を紹介していく。
Microsoft Office をインストール時に導入される。ファミリ名は“Book Antiqua
”。Palatino と酷似するため,Palatino の代用書体として用いられることがある。
これも,Microsoft Office をインストール時に導入される。ファミリ名は“Bookman Old Style
”。
ビットストリーム社の“Vera”シリーズのセリフ版。正体とボールド体からなる。
エックスハイトが高く読みやすい。また,縦画が細めで,横角は太めで,つぶれにくいという特徴をもつ。字画のボールターミナルがなく,すっきりしている点も特徴的である。ファミリ名は“Bitstream Vera Serif
”。
“Liberaion”シリーズのセリフ書体ファミリ。正体・ボールド体・イタリック体・ボールドイタリック体の 4 フェイスから構成される。
Times New Roman と文字幅が一致する。したがって Times New Roman 同様,細身である。ファミリ名は,“Liberation Serif
”。
アドビシステムズ社のロバート・スリムバックにより 1990 年デザインされた“Minion”。ルネサンス末期の書体をモチーフにしている。
通常の OpenType 版 Minion は,Regular,Medium,Semibold,Bold の 4 ウェイトについて,正体とイタリック体がある。それぞれについて,Condensed と Normal の幅がある。これに,Normal の幅のウェイト Black が加わる(これにはイタリック体は用意されていない)。計 17 フェイス構成になる。また,Minion には,Minion Black を除く各フェイスについて,キャプション・注などの小さな文字(Caption),見出しなどのやや大きな文字(Subhead),タイトルなどの大きな文字(Display)それぞれに適するように字形・字間が調整されたバリエーションがあり(Minion Opticals),これを含めて(Minion Black を除いて)計 64 フェイス構成になる。
これをウェブ用に(画面で読みやすく)最適化した“Minion Web”が,かつて Internet Explorer 4 に付属した。現在は,Adobe Reader 7 に OpenType 版 Minion が 4 書体添付されている。これのファミリ名は“Minion Pro
”。
ハーマン・ツァップによってデザインされた,可読性を考慮したセリフ欧文書体。ファミリ名は“Palatino
”。Windows 2000,XP に標準インストールされている。ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。
モノタイプ社の Book Antiqua がこれによく似たデザインをしており,Palatino の代用として用いられることがある。
URW++ 社の Palatino 互換フォントは“URW Palladio L”である。
2005 年,改刻版の“Palatino nova”が発売された。
Mac OS X に標準的にインストールされている。1974 年のデザイン。ファミリ名は,“American Typewriter
”。タイプライタの文字を模した書体であるが,Courier と異なり,プロポーショナル(文字がそれぞれ固有の幅を持つ)である。
“I ♥ NY”のロゴタイプで有名。
字画の太さは均一だが,末端が小さくセリフ処理されている(タイニーセリフ)。20 世紀初頭にデザインされ,名刺などに重用された書体。フォントファミリ名は,銅版に彫り刻んで印刷されたところに由来する。
小文字がスモールキャピタルである点が特徴的である。
Mac OS X に標準的にインストールされている。ファミリ名は,“Copperplate
”。Microsoft Office にもインストールされていることがあり,また,ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることもある。
スクリプト書体に“Copperplate Script”があるが,この Copperplate Gothic とは無関係である。
1725 年にデザインされて,広く使われているセリフ欧文書体。この名前は,デザインしたウィリアム・カスロン(William Caslon)の名からとられている。イギリスの行政機関などでも使われていた。
古い書体だけに,Garamond のように,Caslon の名を冠していてもベンダによって細部のデザインが異なったりする。Mac OS X に標準的にインストールされているものは,1994 年にリデザインされた“Big Caslon”(ファミリ名は“Big Caslon
”)である。
18 世紀初頭にジョン・バスカービル(John Baskerville)によってデザインされた。Mac OS X に標準的にインストールされている。ファミリ名は,“Baskerville
”。Microsoft Office には,“Baskerville Old Face”が添付されていることがある。
18 世紀末にファーミン・ディドー(Firmin Didot)によってデザインされた。1992 年にアドリアン・フルティガーによってディジタルフォントのために改刻され,現在の姿がある。Bodoni に似て,縦画の太い部分が直線的に構成される点が特徴的である。Mac OS X に標準的にインストールされている。ファミリ名は,“Didot
”。
1912 年に世に送り出された Cohin は,低いエックスハイトを持ち,特にイタリック体に特徴がある,個性的なセリフ系フォントファミリである。Mac OS X に標準的にインストールされている。ファミリ名は,“Cohin
”。
1930 年代,見出し用書体としてデザインされたものがはじまり。字画の端をわずかに広げた形状のセリフが特徴で,端正な雰囲気を持っている。
ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。ビットストリーム社よりリリースされている同一デザインの代替書体は,“Flareserif 821”。
スクウェアセリフ系の欧文書体で,辞書の見出し等に使われることが多い。ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。
フレデリック・W・ガウディ(Frederic W. Goudy)によって 1915 年にデザインされた,幅広い用途に対応できるポピュラーな書体。以後,ファミリ展開がなされていった。“i”“j”の点,ピリオドがひし形である点が特徴的。
Microsoft Office に,“Goudy Old Style”が添付されていることがある。ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることもある。
Gill Sans のエリック・ギルによる,1930 年にデザインされた書体。スクウェアセリフ系の端正な書体である。
ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。
Avant Garde をもとにデザインされた,ジオメトリック系スラブセリフ書体。基本的な骨格と設計指針は Avant Garde と同じである。
ミッドレンジ以上のプリンタにインストールされていることがある。
もともとは 1930 年代のデザイン。ひじょうに低いエックスハイトと,“i”“j”のくさび型の点が特徴的である。優美な雰囲気を持つ。
ミッドレンジ以上のプリンタに上にあげたもの(Mona Lisa Solid)より装飾性の高いフォント(Mona Lisa Recut)がインストールされていることがある。Mona Lisa Recut は,字画が隆起したように字画に白く抜かれた部分がある。