Hop step XHTML―ホップ ステップ XHTML

Section 11:テキストモジュール(4)

 テキストモジュールには,多くの要素が含まれる。ここで解説するのは,コンピュータ,略語に関するインライン要素である。

コンピュータコード:code 要素

 code 要素は,その内容がコンピュータコードであることを示す。

内容モデル
(#PCDATA | %Inline.mix;)*
テキストとインライン要素
code 要素の属性
属性名属性値備考
コア属性
style 属性
国際化に関する属性
イベント属性

 これは,実例で理解していただこう。

<p> C 言語の入門は,<code>printf("Hello world!\n");</code> がおきまりである。それで,C++ では,<code>cout &lt;&lt; "Hello world!" &lt;&lt; endl;</code> になった。</p>

コンピュータ入力:kbd 要素

 kbd 要素(keyboard の縮約)は,その内容がコンピュータへの入力,または入力すべきものであることを示す。

内容モデル
(#PCDATA | %Inline.mix;)*
テキストとインライン要素
kbd 要素の属性
属性名属性値備考
コア属性
style 属性
国際化に関する属性
イベント属性

 これも,例で理解いただこう。

<p> セッションの終了は <kbd>exit</kbd> とか <kbd>quit</kbd> とか入力するのが通り相場だが,FTP セッションに関しては,<kbd>bye</kbd> なのである。</p>

コンピュータ出力:samp 要素

 samp 要素は,その内容がコンピュータからの出力であることを示す。

内容モデル
(#PCDATA | %Inline.mix;)*
テキストとインライン要素
samp 要素の属性
属性名属性値備考
コア属性
style 属性
国際化に関する属性
イベント属性

 これも,例を示しておく。

<p> 存在しないウェブページをリクエストしたときの“404”というのは,ウェブサーバが応答するときの先頭部分についてくる成功・失敗等を表すコードである。ブラウザを通すと隠蔽されてしまうが,telnet などを使ってウェブサーバに接続し,存在しないファイルを要求すると,見事に <samp>404 Not Found</samp> と冠された応答が返ってくる。</p>

変数:var 要素

 var 要素は,その内容が変数であることを示す。

内容モデル
(#PCDATA | %Inline.mix;)*
テキストとインライン要素
var 要素の属性
属性名属性値備考
コア属性
style 属性
国際化に関する属性
イベント属性

 これは,2 つほど例を示しておく。

<p> C 言語では,<var>n</var> について,“1 を代入する”とき <code>n = 1</code>,“1 であるか評価する”とき <code>n == 1</code> と書く。</p>

<p> telnet の書式は,<br /><code>telnet <var>host</var> <var>port</var></code><br />である。</p>

略語:abbr 要素

 abbr 要素は,その内容が(一般的な)略語であることを示す。たとえば,“January”を“Jan.”,“Limited”を“Ltd.”と省略する類である。

内容モデル
(#PCDATA | %Inline.mix;)*
テキストとインライン要素
abbr 要素の属性
属性名属性値備考
コア属性
style 属性
国際化に関する属性
イベント属性

 abbr 要素では,title 属性に,その語の略す前の形を書き込むことがある。

頭字語:acronym 要素

 acronym 要素は,abbr 要素に似ているが,特にフレーズの語の頭文字をとって略する語(頭字語とうじご:アクロニム)を表すのに用いる。“Uniform Resource Identifier”を“URI”などと略すものである。より狭義では,“NATO”(ナトー)のように,文字をスペルアウトでなく,つないで発音するものを指す。しかし,特にどこを境界として頭字語とするかは,微妙な問題である。

内容モデル
(#PCDATA | %Inline.mix;)*
テキストとインライン要素
acronym 要素の属性
属性名属性値備考
コア属性
style 属性
国際化に関する属性
イベント属性

 acronym 要素でも,title 属性に,その語の略す前の形を書き込むことがある。

 ところで,日本語における略語であるが,これはさらに微妙な問題といえる。一般に,日本語の略語は頭字語のタイプとみなせるものが多いが,そのときに表意文字(=漢字)として 1 文字ずつ取られるという点が欧州言語との違いとなる。もちろん,それ以外のタイプの略し方(特に外来語の略語,たとえば“パーソナルコンピュータ”→“パソコン”)もある。一般に,略語のほうが広い概念であることと,下記注のように XHTML 2.0 で acronym 要素が消滅する見込みである点を考え合わせることがヒントであろう。

 それで,abbr 要素・acronym 要素で略語を示す意義は,“それが略語である”ことを示すほかに,音声出力,自動処理にある。音声出力においては,その読みのコントロールに情報を供せられる。また,自動処理においては,たとえばサーチエンジンが“略語ともとの形を同じ語句としてみなす”ことができるようになる。

 XHTML 2.0 では,acronym 要素はなくなり,その役割は abbr 要素に吸収される見込みである。使い分けが微妙である点が問題なのだろう。