Let's begin XHTML―さあ始めよう XHTML

Section 10:文書中の部分の役割

 XHTML では,文書中の各部分の役割に応じた要素が用意されている。ここでは,それらのうち,基本的なものをいくつか紹介する。

語句の強調:em および strong 要素

 文章中で,強調したい部分は,em 要素で表す。とくに強く強調したい部分は,strong 要素で表す。

<em>...</em>
<strong>
...</strong>

 em 要素および strong 要素は,パラグラフなどの一部(語句・フレーズなど)を強調したいことを表す。すなわち,パラグラフ・見出しなどはこれらの要素を含むことができる。強調の要素は,テキストなどを含むことができるが,パラグラフなどを含むことはできない。

 使用例をご覧いただこう。

<p>これには,出力されるテキストが書かれているのはもちろんであるが,そのほかに,ブラウザほか XHTML を処理するソフトウェアが処理を行うための符号が,<em>テキストで</em>書き込まれている。だから,このページも,そのようなテキストである。</p>

上記の例では,パラグラフ中の“テキストで”の部分が強調されている。

引用:qblockquote および cite 要素

 文書中に,他の文書から引用した部分があるときは,そのための要素を使う。引用は,フレーズを引用するのか(パラグラフの中で引用するのか),パラグラフ単位で引用するのかによって使用する要素が異なる。また,引用の出典を表すための要素もある。

 パラグラフの中での引用には,q 要素を用いる。

<q>...</q>

q 要素の扱いは,前述の em 要素などと同じで,パラグラフ・見出しなどの中に現れることができる。テキストなどを含むことができるが,パラグラフなどは含むことができない。

 q 要素には,出典を表すための cite 属性が用意されている。この属性には,出典の URI を与えることができる。

 例をご覧いただこう。

<p>運命という言葉は,後出しの予言のごとく現れ,諦念のうちに納得させられてしまう。しかし,<q>強い人間は自分の運命を嘆かない</q>ものである。後出しの予言に満足することは,弱さの露呈なのかもしれない。</p>

 q 要素で引用したフレーズを示すときは,前後に引用符をつけないのが普通である。ブラウザの設定によって,または,スタイルシートによって,q 要素の内容が出力されるときに(自動的に)引用符が付加されることがあるからである。引用符を前もって書き込んでおくと,このような場合に二重に引用符が出力されてしまう。

 一方,パラグラフ単位の引用は,blockquote 要素で表す。

<blockquote>...</blockquote>

この blockquote 要素は,パラグラフ・見出し・箇条書きなどと同じ扱いで,パラグラフ中に含まれたりはしない。blockquote 要素の内容は,パラグラフなどである。

 blockquote 要素にも,cite 属性が用意されており,出典の URI を与えることができる。

 q 要素との使われ方の違いに注意しながら,次の例をご覧いただきたい。

<p>XML は,WWW における HTML の限界を背景にして,SGML のようなメタな言語を WWW で実現しようと作られたものである。XML とは端的にどのようなものか。仕様書の“序”をご覧いただこう。</p>
<blockquote cite="http://www.w3.org/TR/2000/REC-xml-20001006">
<p>Extensible Markup Language, abbreviated XML, describes a class of data objects called XML documents and partially describes the behavior of computer programs which process them. XML is an application profile or restricted form of SGML, the Standard Generalized Markup Language. By construction, XML documents are conforming SGML documents.</p>
<p>XML documents are made up of storage units called entities, which contain either parsed or unparsed data. Parsed data is made up of characters, some of which form character data, and some of which form markup. Markup encodes a description of the document's storage layout and logical structure. XML provides a mechanism to impose constraints on the storage layout and logical structure.</p>
</blockquote>

 引用部分に対して出典を表すのに,cite 要素が用いられる。

<cite>...</cite>

cite 要素も,em 要素のように,パラグラフなどの一部として現れる。

 次のように使われる。

<p>生きている意味というのは,考え始めるとふとわからなくなる。<cite>太宰治</cite>は,<q>僕は自分がなぜ生きていなければならないのか,それが全然わからないのです</q>と問うた。もしその答えが,明確に出てしまったら,生きている意味はどうなってしまうのだろうか。</p>

署名:address 要素

 文書について,メールアドレスなどの署名を記述するのに address 要素が使用される。

<address>...</address>

address 要素はパラグラフなどと同等の扱いである。内容はテキストなどで,要素はパラグラフなどに含まれてはならない。

 次のように使用される。

<address>Presented by Studio HEXANE, hexane@tg.rim.or.jp</address>

 ここで,WWW ページでむやみにメールアドレスを公開すると,それがメールアドレス自動収集プログラムによって収集され,スパムメールの標的になることがある。情報の発信者として連絡先を明示することは重要であるが,一方でその責任を果たそうとすると思わぬ被害を受けてしまう。対策としては,

  • スパムメールを受け取ってもよいメールアドレスを公開する
  • メールアドレスが収集されにくくするように工夫する

ことが考えられる。後者については,たとえば,

  • メールアドレスをテキストでなく,“文字の書いてある画像”として用意する
  • メールアドレスと判断するキーになるアットマーク「@」を“&#x40;”と記述する(XHTML ファイル中の“&#x40;”は表示の際にアットマークに置き換わる)

という方法がある。これを用いて,先ほどの例は,

<address>Presented by Studio HEXANE, hexane&#x40;tg.rim.or.jp</address>

と書ける。

 “&#x40;”がアットマークに置き換わるようなしくみを文字参照という。この詳細は,Let's begin XHTML では省略する。