Appendix A : 注意すべき記述

移動,点滅,スクロール,自動更新に対して

こういった技術は人目を引くには非常に好都合であるが,障害を持つ人や特定のブラウザを利用している人にとってのアクセシビリティを損なうことになる。

Dynamic HTML などによる移動するテキストは,認識障害を持つ人が残りの部分を読めなくすることもある。また,流れる文字列については,認識障害を持つ人や,視覚障害を持つ人は高速で流れるテキストを読みにくかったり,もしくはまったく読むことができない。目の不自由な人にとっては,ページの内容を音声にして出力するスクリーンリーダのような UA は移動するテキストは読み上げられないため,その部分の内容を理解することができない。

移動するオブジェクトに関しても障害を持つ人にとってはアクセス不能になることを考慮しなくてはならない。例えば,手足が不自由な人は移動するオブジェクトに追いつくように速くポインタを動かしたり,動いているオブジェクトのある点を正確にクリックするなどの動作も困難であることが多いだろう。

点滅するテキストについては光過敏性てんかんのある人が毎秒 20回をピークとして毎秒 4〜59回の明滅や閃光が引き金となって発作を起こす場合があり,注意を要する。

<MARQUEE><BLINK> は W3C の HTML の仕様書に定義されていないし,それぞれ Internet Explorer,Netscape Navigator 独自の記述であるため特定のブラウザでのみしか出力することができないので,使用には慎重を期すべきである。

単にアクセスできないようになるだけでなく,健康を害してしまう恐れもあるため,フラッシュを繰り返すようなスクリーンの点滅や更新は避けなくてはならない。移動するオブジェクトについては,可能であれば避けるべきであるが,用いなくてはならない場合はユーザが移動や更新をしないように設定できるような機能をつけるべきである。また,スタイルシートやスクリプトで動きを設定するようにするべきである。

リンクについて

目の見えない人や目に不自由のある人は音声出力や,拡大ディスプレイによってページにアクセスしている。そのためリンクの一覧などで,ペ−ジの大まかな構成をつかんだり,リンクを見つけたりすることが多い。そのため,リンクの説明が不充分であったり,リンクの文字列が文脈を離れて読んだときに意味をなさなかったり,一意的でない場合はどこへのリンクなのかよくわからず,その周辺を何度も読みかえさなくてはならなくなる。

もしリンクの文字列に書いてあることとリンク先の内容が異なったりしたら,ユーザはどう思うだろう。ユーザは目的とする情報を得る事ができているのだろうか。決してそうとは言えないだろう。また,同じリンク文が異なったリンク先を指定していても困ってしまう。目次,とあったら全て目次へジャンプすべきである。長々とした文がリンクされていても,その中のどの言葉にたいしてリンクしているのか困ってしまう。

略語

略語のでき方にはいくつかの種類がある。普通,発音されるときはもとのままの読み方で読まれることが多く,アルファベットがそのまま読まれることも多い。もう 1つ,アクロニムと呼ばれ,その頭文字を取って 1つの単語のようにしたものがあり,発音されるとき,ひとつの単語のように読まれることが多い。前者の略語の場合 <ABBR> を用い,後者には <ACRONYM> を用いる。

このような略語は音声出力されるときや点字化して出力されるときに発音のしかたがわからないため解読不可能になってしまうことがある。

<ABBR><ACRONYM> を記述しよう。例えば以下のように TITLE 属性を用いて記述することによって,そのフルスペルを与えることができ,音声出力や点字による出力の際の手がかりとなる。また,サーチエンジンが情報を収集するのに役立つ。

<P>X線<ABBR TITLE="computed tomography">CT</ABBR> や <ABBR TITLE="magnetic resonance imaging">MRI</ABBR> が主に形態をみるのに対し,動的な生体機能を検査できるもので現在臨床で利用されているものには <ACRONYM TITLE="positron emission tomography">PET</ACRONYM> と <ACRONYM TITLE="single photon emission computed tomography">SPECT</ACRONYM> がある。</P>

X線CTMRI が主に形態をみるのに対し,動的な生体機能を検査できるもので現在臨床で利用されているものには PETSPECT がある。

外国語の使用

ページを製作していく過程で,どの言語を用いているのかということを明らかにする必要が出てくる。たとえばページ上でアルファベットを使用する場合,視覚的には何ら問題はないかもしれないが,視覚障害者がテキストリーダなどを使って閲覧すると,問題が浮かび上がってくる。さて,このアルファベットはどう読んだらいいのだろうか。これは英語なのかそれともドイツ語なのか。言語によって発音は変わってくる。このような問題の解決のためにも,前もって今使用している言語を指定しておくべきで,その指定には LANG 属性を用いる。アプレットなどでは適用されないのは当然のことだが,<IMG> などのインライン要素においても,言語の指定などに LANG 属性を用いる。こうすると視覚障害のある方にも情報が正しく伝わるようになるだろう。


解決! センター化学 I
解決! センター化学 I ◆ Z 会出版