前節に引き続き,ポピュラーなゴシック系和文フォントを紹介する。
モリサワ社製の,基本 5 書体のうちのひとつ。ハイエンドプリンタにインストールされていることがある。
この書体の特徴は,多くのゴシック体のように均一の字画の太さではなく,太―細―太のアクセントがつけられている点にある。画像化されたテキストのような解像度の低いものではこの特徴はわかりづらいが,高解像度プリンタである程度のサイズで出力するとこれを見て取ることができる。
モリサワ社よりリリースされている,OpenType 基本 7 書体のひとつ。その名称のとおり,見出し用のゴシック体。ウェイト展開はされていない。
モリサワ社よりリリースされている。もとは見出し用ゴシック体として制作されたが,ウェイト展開によって,現在ではオーソドックスなゴシック体ファミリとなった。L,R,M,DB,B,H,U の 7 ウェイト構成である。見本は“ゴシック MB101 R”。
字面は中ゴシック BBBより大きめ。
モダンなデザイン,高い可読性を持ち,印刷などでは本文から見出しまでと,ひじょうに人気が高い,モリサワ社製のフォントファミリ。一日生活していて,この“新ゴ”に出会わない日のほうが少ないだろう。WWW ページ上で本文・見出しのフォントとして使用されることはまれだが,画像化されたテキストなどに見ることができる。
細いものから,EL(ExtraLight),L(Light),R(Regular),M(Medium),DB(DemiBold),B(Bold),H(Heavy),U(Ultra) の 8 つのウェイトがある。上に掲げたものは,標準的なウェイト“R”。
“新ゴ”には,多くの組み替えかなが用意されている。たとえば,“ネオツデイ”(大がな KL と小がな KS がある)は,新ゴの開発契機となった“ツデイ”を改刻したかなで,表情がぐっと柔らかくなる。
“新ゴ”は,写真植字専用の書体“ゴナ”に類似しており,しばしばその代用として使用される。
モダンゴシックとしては,この“新ゴ”のほかに,“ナウ-G”,“角ゴシック Ca”,“DF 華康ゴシック体”,“モトヤシーダ”,“AXIS”,イワタ社の“イワタ新ゴシック”,フォントワークス社の“ニューロダン”などがある。
リョービイマジクス社からリリースされている,モダンゴシックフォントファミリ。ウェイト構成は,M,B,E,U。代表的なモダンゴシック“新ゴ”に比べると,柔らかな曲線が多く,余裕のある組み上がりになる傾向がある。組み替えかなとして,“味岡かな”シリーズが用意されている。2006 年に発売された OpenType 版では,かなが大幅に改刻されている。
上に示したものは,“ナウ-GB”。
ナウシリーズは,2005 年グッドデザイン賞を受賞した。
“AXIS”は和欧混植を重視したモダンなゴシック体で,細いものから UL(Ultra Light),EL(Extra Light),L(Light),R(Regular),M(Medium),B(Bold),H(Heavy)の 7 種のウェイトがある。上掲の見本は“AXIS R”。字面はモダンゴシックとしてはやや小ぶりであり,並べたときに明るい表情を醸し出す。
AXIS フォントは,2003 年グッドデザイン賞を受賞している。また,和文では珍しい,字幅の狭い“AXIS Condensed”(UL〜B の 6 ウェイト),さらに字幅の狭い,“AXIS Compressed”(UL〜M の 5 ウェイト)が用意されている。
“AXIS R”,“AXIS Condensed R”および“AXIS Compressed R”については,収録文字が常用漢字までに制限された試用版が無償提供されている。
キヤノン社からリリースされている,モダンゴシックフォントファミリ。ウェイト構成は,L,M,B,U。字面はかなり大きく,直線的である。テレビのテロップなどでの利用が見られる。モダンゴシックとしては,ファミリで安価に入手可能なもののひとつである。ただし,2007 年 1 月にパッケージ販売は終了し,同社製のプリンタにバンドルされるものとして入手することになる。
上に示したものは,“角ゴシック Ca-M”。
ダイナコムウェア社からリリースされている,モダンゴシックフォントファミリ。ウェイト構成は,W2,W3,W5。同社のパッケージに収録されており,安価に入手可能なモダンゴシックである。“華康”はダイナコムウェア社の香港・台湾での名称。OpenType 版では,かなを中心に改良されている。
上に示したものは,TrueType 版“DF 華康ゴシック体 W5”。
1972 年,サイン用書体として制作されたゴシック系書体。高い視認性を誇る。また,オーソドックスなゴシック体とモダンなゴシック体への過渡的な特徴も見て取れる。この書体の何よりの特徴は,その名前にあるように縦横比が 45:50,すなわち正方形の枠でなく 90% 扁平な枠に文字が収められている点である。
かつて,Microsoft Office に付属していた。現在,ディジタルフォントとしての入手は困難である。
丸ゴシック系和文は,字画の先端が丸く処理されている書体であるほかに,多くが字画が折れる部分も丸く処理している。欧文書体でこのようなスタイルの書体は少ない。
Microsoft Office とともにインストールされる,丸ゴシック体。ファミリ名は“HG丸ゴシックM-PRO
”または“HGMaruGothicMPRO
”。このファミリ名の“ゴシック”は,いわゆる“半角カナ”であることに注意。
これは,リョービイマジクス社の丸ゴシック体ファミリ“シリウス”と字母が同じ(同じデザイン)である。“シリウス”は,LII,M,B,E,U の 5 つのウェイトから構成されており,この“HG 丸ゴシック M-PRO”は“シリウス-M”に相当する。さらに,Mac OS に添付されている“丸ゴシック-M”は“シリウス-M”の名前を変えたものである。
“シリウス”は,2006 年に発売された OpenType 版では,かなが大幅に改刻されている。
“平成書体”のひとつで,これは丸ゴシック体。最後に制作された。デザインは写真植字機専門会社の写研が担当している。
制作されたのは全角文字で,半角文字はベンダにより異なる。これも平成角ゴシックと同じ事情でファミリ名は 1 つに定まらない。
平成丸ゴシックは,W4 と W8 のウェイトがあり,上に示したのはダイナコムウェア社製の“W4”。W8 は若干手に入りづらく,たとえばアドビシステムズ社が発売している。
Mac OS X 以降で“W4”(ウェイト 4)が標準的にインストールされている,大日本スクリーン社製のフォント。
骨格は,ヒラギノ角ゴとほぼ同じであるが,さらにふところを広げたデザインになっている。
これも本来,“ヒラギノ丸ゴ Pro”がファミリ名で,その中にウェイト違いが含まれるはずだが,Mac OS 版 Internet Explorer 5 は(別のウェイトがあった場合も)別のフォントファミリとして扱い,“ヒラギノ丸ゴ Pro W4
”と指定することになる。
上に掲げたものは,“ヒラギノ丸ゴ W4”。
モリサワ社より発売されている,丸ゴシック体ファミリの 1 つ。101,201,34,501 の 4 つのウェイトから構成される。上に掲げたのは,もっとも細いウェイト“じゅん 101”で,モリサワ社の基本 5 書体のひとつであり,ハイエンドプリンタにインストールされていることがある。
キヤノン社より発売されている,丸ゴシック体ファミリ。HG 丸ゴシック(シリウス)と同じく字面の大きな丸ゴシック体。L,M,B,U の 4 つのウェイトから構成される。角ゴシック Ca と骨格が類似している。上に掲げたのは,“丸ゴシック Ca-M”。
このほかの字面の大きな丸ゴシック体としては,写真植字専用の“ナール”,フォントワークス社の“スーラ”,モリサワ社の“新丸ゴ”,モトヤ社の“モトヤマルベリ”などがある。