Hints of fonts on the web―Web におけるフォントのヒント

Section 14:明朝系和文(1)

 明朝系和文の特徴は,縦画が太く,横画が細いこと,それから,主に横画の終端に三角形の装飾(うろこ)がある点である。CSS では,明朝体は一般フォントファミリ“serif”でくくられる。

明朝系和文(1)

MS 明朝

MS 明朝

 Windows 標準の明朝体のひとつ。リョービイマジクス社の“本明朝-L”をもとに制作された(簡略化されている)。縦画と横画の幅があまり違わない“細い”明朝体である(ウェイトが低い)。ファミリ名は“MS 明朝”(“M”と“S”が 2 バイト文字(全角)であることに注意),または,“MS Mincho”。(全角)かなは漢字と同じ幅を持ち,(半角)英数字は全角文字の半分の幅を持つ。この意味で,一般フォントファミリ“monospace”に属するフォントであるとも言える。

 このフォントは,プリンタ出力時に,設定によってはプリンタ側のフォント(たとえば,“リュウミン L-KL”や“平成明朝”)に置き換えられることがある,

MS P 明朝

MS P 明朝

 Windows 標準の明朝体のひとつ。MS 明朝に比べると,(全角)かなと(半角)英数字が固有の幅を持っている(プロポーショナル)点が異なっている。

 ファミリ名は“MS P明朝”(“M”と“S”が 2 バイト文字(全角)であること,その次に半角空白があって,全角の“P”に続けて“明朝”に注意),または,“MS PMincho”。

平成明朝

平成明朝 W3

 “平成書体”のひとつで,これは明朝体。リョービイマジクス社がデザインしている。電子機器での利用がもとより考慮された書体である。低解像度の機器でも問題なく出力させるため,直線的なデザインが多用されている。字画は簡素,大ぶりなかなが特徴である。

 制作されたのは全角文字で,半角文字はベンダにより異なる。基本的に同じ書体だがベンダが異なったりする関係上,ファミリ名は 1 つに定まらない。

 平成明朝体には,W3,W5,W7,W9 のウェイトが一般に販売されており,上に示したのはダイナコムウェア社製の“W3”。Mac OS に標準的にインストールされるものは W3 である。

 平成明朝は,ミッドレンジクラスのプリンタにインストールされていることがあり,たとえば Windows で“MS 明朝”が置換されたりすることがある。

ヒラギノ明朝

ヒラギノ明朝 W3

 Mac OS X 以降に標準でインストールされている,大日本スクリーン社製のフォント。インストールされているのは“W3”と“W6”(ウェイト違い;細い(W3),太い(W6))。ファミリとしては,W2〜W8 の 7 ウェイトで構成される。

 これも,ヒラギノ角ゴと同じく,本来は,“ヒラギノ明朝 Pro”がファミリ名で,そのバリエーションとして W3 および W6 と指定する(OS からはそのように認識される)のだが,Mac OS 版 Internet Explorer 5 はそれぞれを別のフォントファミリとして扱い,“ヒラギノ明朝 Pro W3”または“ヒラギノ明朝 Pro W6”と指定することになる。

 ヒラギノ明朝には,活字に基づく“游築五号仮名”“游築 36 ポ仮名”が用意されている。また,横書き時にラインが揃うように調整された“横組用仮名”もある。“横組用仮名”は,OpenType Pro 版には標準で収録されている。

 上に示したのは,“ヒラギノ明朝 W3”。

IPA 明朝

IPA 明朝

 IPA ゴシックと対になって展開される,情報処理推進機構(IPA)が無償公開している明朝体フォント。

 デザインはタイプバンク社が担当しており,同社の“タイプバンク明朝(TB 明朝)”と同様のデザインである。シンプルな字画とオーソドックスな字形を特徴とする。

 上掲の見本は“IPA 明朝”で,“全角文字”の幅は全角固定,“半角文字”の幅は半角固定である。かな・英数字が可変ピッチの“IPA P 明朝”も同梱されている。

 入手方法については,Appendix D を参照されたい。

本明朝

本明朝-M

 リョービイマジクス社より発売されている,明朝体ファミリ。ウェイトは L,M,B,E,U からなる。並べたときに黒みが出るのが特徴。

 “本明朝-L”および“本明朝-M”には,“標準がな”“小がな”“新がな”“新小がな”の 4 種のかなのバリエーション,“本明朝-B”“本明朝-E”“本明朝-U”には“標準がな”“新がな”の 2 種のかなのバリエーションがある。“新がな”“新小がな”は,築地系のオールドスタイルのかなである。“本明朝-M”には,英数字が判別性高くデザインされている“本明朝-MA”もバリエーションとしてラインナップされている。組み替えかなとして“味岡かな”シリーズも用意されている。

 上に示したものは,“本明朝-M(標準がな)”で,Mac OS に添付されるものと同じもの。また,“本明朝-L”は,MS 明朝のもとになっている。

 ややデザインが異なる,本文用にスコープした“本明朝-Book”が新たに追加された。

DF 麗雅宋れいがそう

DF 麗雅宋

 ダイナコムウェア社よりリリースされている,装飾性の強い,セリフ系和文書体。優雅な雰囲気を醸し出し,見出しやテレビの字幕等に人気の高い書体である。

 ファミリ名は“DF麗雅宋”または“DFLeiGaSo-W9”。DF 麗雅宋では,半角英数字が全角文字の半分の幅で,かなの幅も均一である。このほかに,

  • 半角英数字がプロポーショナル(文字ごとに幅が違う)な“DFP麗雅宋”(“DFPLeiGaSo-W9”)
  • 半角英数字とかながプロポーショナルである“DFG麗雅宋”(“DFGLeiGaSo-W9”)

もある。“HG……”のフォントとは半角英数字・(全角)かなの幅に関する名前の付け方の規則が異なることに注意。

 上に示したものはもっともウェイトの高いもの(W9 に相当)で,現在 W5,W7 もラインナップされている。

Bitstream Cyberbit

Bitstream Cyberbit

 Section 8 で紹介した Bitstream Cyberbit は幅広い文字をカバーしており,和文グリフも含まれている。