Hints of fonts on the web―Web におけるフォントのヒント

Section 15:明朝系和文(2)

 前節に引き続いて,明朝系和文書体を紹介していく。

明朝系和文(2)

小塚明朝

小塚明朝 R

 アドビシステムズ社製の,比較的新しい明朝体。モダンなデザイン,大ぶりなかな文字を特徴とする。小塚ゴシックと並んで,同社製品にバンドルされていることが多い。

 OpenType Pro 仕様のものには,縦組み用・横組み用の組み替えかなが搭載されている。また,同社の“りょう”かなで組み替えると,柔らかい表情が得られる。

 ウェイトは,細いほうから EL(Extra Light),L(Light),R(Regular),M(Medium),B(Bold),H(Heavy)の 6 種類で,上に示したものは標準的なウェイト“小塚明朝 R”。

リュウミン

リュウミン L-KL

 モリサワ社よりリリースされている,DTP ではデファクトスタンダードとも言ってよい明朝体。直線的でシャープな字画と,起筆・終筆のアクセントが特徴である。名前の由来は,“森川龍文堂りょうぶんどうの明朝体”を縮約した“龍明”をそのまま読んだものである。

 ウェイトは細いほうから L(Light),R(Regular),M(Medium),B(Bold),EB(ExtraBold),H(Heavy),EH(ExtraHeavy),U(Ultra)と 8 種類あり,上に示したものはもっともポピュラーな“リュウミン L-KL(OpenType 版)”。リュウミン L-KL については,OpenType 化に伴い,欧文が作り直されている。

 リュウミン L-KL はハイエンドプリンタにインストールされていることがあり,たとえば Windows 環境で“MS 明朝”が印刷時にこのフォントに置換されることがある。また,Mac OS に“リュウミンライト-KL”の名前で添付されている。

 また,リュウミンには,かなを組み替えたバリエーションがあり,“-KL”は標準のかな,“-KS”は小ぶりなかな,“-KO”はオールドスタイルのかなを表す。活字の復刻として“秀英 3 号”,“秀英 5 号”がある。2008 年 1 月現在,ウェイト EB,EH の組み替えかなは年間契約プログラム“MORISAWA PASSPORT”でのみ提供される。

DF 華康明朝体

DF 華康明朝体 W3

 ダイナコムウェア社がリリースしている明朝体。比較的複雑なエレメントで構成される明朝体である。ウェイトは W3,W5 から構成されている。OpenType 版は,かなを中心に改良されている。

 上の見本は,TrueType 版“DF 華康明朝体 W3”。

教科書 ICA

教科書 ICA R

 モリサワ社よりリリースされている,(小学校)教科書用書体。“正しい”手書き時の運筆に留意されている。

 ウェイトは細いほうから L,R,M と 3 種類あり,上に示したものは“教科書 ICA R”。

 教科書体は明治時代に成立し,筆書を直接のルーツとするが,CSS2 の仕様書で一般フォントファミリ“serif”に分類されているため,ここではこれに従っておく。

イワタ教科書体

イワタ中太教科書体

 イワタ社よりリリースされている,(小学校)教科書用書体。標準的な教科書体と見てよいだろう。

 ウェイトは,細いほうから,細,中太,太,特太の 4 種類。上に示したものは“イワタ中太教科書体”。

 そのほか教科書体としては,ダイナコムウェア社の“DF 教科書体”,モトヤ社の“モトヤ教科書”,フォントワークス社の“ユトリロ”がある。

太ミン A101

太ミン A101

 モリサワ社よりリリースされている,“リュウミン L-KL”と並ぶ明朝体書体。基本 5 書体のひとつで,ハイエンドプリンタにインストールされていることがある。

 字画はリュウミンより簡素で,重心が低め。ウェイトはリュウミン R 程度。ウェイト展開はされていない。OpenType 化に伴い,欧文が作り直された。

見出ミン MA31

見出ミン MA31

 モリサワ社よりリリースされている,OpenType 基本 7 書体のひとつ。その名称のとおり,見出し用の明朝体。かなが漢字より若干細めに作られている。

 ウェイトはリュウミン H 程度。ウェイト展開はされていない。

ナウ-M

ナウ-MB

 リョービ社からリリースされている,横画の太い明朝系フォントファミリ。ウェイト構成は,M,B,E,U。欧文書体の Clarendon に似た雰囲気を持つ。目を引きやすく,特に最高ウェイトの“ナウ-MU”は,力強さと明快さを持ち,商品のロゴタイプに重用される。

 上に示したものは,“ナウ-MB”。“ナウ-MB”は,2005 年開催の“愛・地球博”のサイン書体(案内・看板などの書体)として採用された。

 “ナウ-M”には,組み替えかなとして,“味岡かな”シリーズが用意されている。

 同様のデザインの書体として,“創英プレゼンス”,モリサワ社の“カクミン”がある。

創英プレゼンス

創英プレゼンス EB

 横画の太い明朝体。ウェイト構成は B と EB で,上にあげたものは“創英プレゼンス EB”。ナウ-M に比べるとうろこが小さめで,ふところが狭く,直線的。

 Microsoft Office に“HG 創英プレゼンス EB”(HG・HGP・HGS)が添付されていることがある。