“この語句は強調”といった構造上の意味を持たせて HTML を書くことができる。これは太字の <B>...</B> や斜体の <I>...</I> とは少し違う。
太字や斜体ばかりでなく,Section 2 にあった<BIG>...</BIG> や <SUB>...</SUB> などは,いずれも“出力に実際にはたらきかける‘呪文’”であった。
それに対して,“この語句は強調”などというように語句に意味づけをすることもできる。指定された役割に応じて太字になったり斜体になったりする。
<B>...</B> や <I>...</I> は,たとえば“意図はどうであれ,太字にしたい,斜体にしたい”という考え方であるが,ここで紹介するものは,“どのように表現されようと,強調,定義の意味を語句に持たせたい”という考え方による。
このような“構造を持つフレーズ”を指定するおもな“呪文”を整理する。
<EM>...</EM>
強調部分を示す。通常は斜体で表現される。
<STRONG>...</STRONG>
より強い強調部分を示す。多くのブラウザは太字で表現する。
<DFN>...</DFN>
何らかの定義をしている部分。
<CITE>...</CITE>
引用文献や参照元を示す。ふつうは斜体で表現される。また,Section 5 で解説するように,引用する文章や語句を指定する <BLOCKQUOTE> や <Q> としばしば併用される。
これらはいずれも,前後で改行されない。簡単な例をあげてみよう。
<P><STRONG>注意:</STRONG>この付近には<EM>ひぐま</EM>が出没することがあります。登山者の方はくれぐれも用心して下さい。</P>
<P><CITE>クラーク博士</CITE>曰く,<Q>少年よ大志を抱け。</Q></P>
注意:この付近にはひぐまが出没することがあります。登山者の方はくれぐれも用心して下さい。
クラーク博士曰く,少年よ大志を抱け。
これらは,構造の指定の結果が斜体や太字として表現されるという点で前節のものと異なっている。だから,見た目がすべて同じになるとは限らないが,筆者の意図は HTML の原稿から確実にくみ取ることができる。
強調を斜体にするか,太字で表現するかの判断はブラウザ側にゆだねられている。もちろん,スタイルシートを使えば筆者が設定することも可能である。
“クリックするとメールソフトが起動”はジャンプと同じ要領で記述する。
<A HREF="mailto:(メールアドレス)">...</A>
ブラウザと関連付けられたメールソフトが起動し,宛先にはここに書いたメールアドレスが自動的に入れられるだろう。
文書中に筆者のメールアドレス記述したり,署名したりする部分も“署名”という“構造を持つ部分”である。
<ADDRESS>...</ADDRESS>
ここに,文書やフォームなどについての問い合わせ先を記述する。
たとえば次のように使用する。
<ADDRESS>ご意見がございましたら,<A HREF="mailto:hexane@tg.rim.or.jp">メール</A>にてお寄せください。</ADDRESS>
この部分はおもに斜体で実現されることが多い。これは上に示した強調などとは異なり,前後に改行をともなう。
情報の匿名による発信は望ましくない。少なくとも名前またはメールアドレスを付記しておくべきであろう。無責任な情報の垂れ流しは,無用な混乱を生む。
強調する部分や署名などを明示して,筆者の意図が読者にはっきり伝わるように文書の構造を記述する。積極的に活用したい。